高額な金銭を要求されてしまったら弁護士や司法書士を利用した債務整理なんて不可能と勘違いしがちです。
今回は、債務整理の費用と債務整理の費用が支払える理由について紹介をしていきます。債務整理にお悩みの方は必見です。
目次
債務整理にかかる費用はおいくら万円?
債務整理とは、
- 任意整理
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
があります。そして、自己破産以外は債務者のみで実行することが困難です。
弁護士・司法書士を利用して確実に実行していくのが安全といえます。
債務整理の費用の大部分は、弁護士や司法書士への報酬です。
- 相談料:相談をする際に支払う費用(無料が多い)
- 着手金:弁護士や司法書士と依頼を結んだ際に支払う費用
- 成功報酬:債務整理に成功した際に支払う費用
- 減額報酬:任意整理にて借金の減額に成功した際に支払う費用
このようなものがあります。
弁護士や司法書士に支払う報酬
債務整理をおこなう弁護士や司法書士に支払う報酬額は、平成16年の弁護士報酬自由化に伴い、報酬学は自由化されています。
費用は異なりますが、日弁連と日司連による「債務整理事件の処理に関する規定」という指針があり、各事務所は、おおむね指針に従っています。
任意整理のみの指針なので、民事再生(個人再生)や自己破産は各事務所が自由に報酬を決めているようです。
相談料
初回無料をはじめ、無料で受けることのできるサービスはあります。この際、着手金や成功報酬などの費用面の相談をしておきましょう。
信頼性が高い事務所であれば、事前に費用の見積もりをおこなってくれます。事前に見積をしてもらう理由ですが、原則、追加費用の請求というものが禁止されているからです。
着手金
債務整理を手伝ってくれる弁護士や司法書士へ支払う費用です。任意整理の場合、着手金の上限は決められていません。
また、債務整理に失敗しても着手金が割引になるということはありません。逆に、着手金を後日追加請求することも原則禁止されています。
2008年に日弁連がおこなったアンケートでは、下記のような着手金の割合になりました。
任意整理の着手金の費用と割合
任意整理の着手金 | 割合 |
10万円前後 | 30.8% |
20万円前後 | 43.6% |
30万円前後 | 18.9% |
40万円前後 | 1.3% |
その他 | 5.4% |
個人再生の着手金の費用と割合
民事再生(個人再生)の着手金 | 割合 |
10万円前後 | 13.5% |
20万円前後 | 25.7% |
30万円前後 | 47.4% |
40万円前後 | 12.2% |
その他 | 1.3% |
自己破産(同時廃止)の着手金の費用の割合
自己破産の着手金 | 割合 |
10万円前後 | 9.8% |
20万円前後 | 37.3% |
30万円前後 | 48.7% |
40万円前後 | 1.6% |
その他 | 2.7% |
引用:市民のための弁護士報酬の目安(2008年度アンケート結果版)
成功報酬
任意整理の成功報酬の割合
任意整理の成功報酬 | 割合 |
0円 | 31.3% |
5万円前後 | 5.3% |
10万円前後 | 36.3% |
20万円前後 | 18.4% |
30万円前後 | 5.3% |
その他 | 3.3% |
民事再生(個人再生)の成功報酬の割合
民事再生(個人再生)の成功報酬 | 割合 |
0円 | 51.4% |
10万円前後 | 18.3% |
20万円前後 | 17.2% |
30万円前後 | 8.9% |
40万円前後 | 1.0% |
その他 | 3.1% |
自己破産(同時廃止)の成功報酬の割合
自己破産(同時廃止)の成功報酬 | 割合 |
0円 | 66.3% |
10万円前後 | 13.6% |
20万円前後 | 12.0% |
30万円前後 | 3.8% |
40万円前後 | 0.5% |
その他 | 3.0% |
引用:市民のための弁護士報酬の目安(2008年度アンケート結果版)
一般的に、着手金の金額が高いほど、成功報酬は安くなります。もらえるかわからない成功報酬よりも、確実に手に入る着手金に重きをおいているようです。
減額報酬
民事再生(個人再生)・自己破産で裁判所に支払う費用
民事再生(個人再生)・自己破産は裁判所へ申立てることで実行されるため、裁判所に「予納金」を納める必要があります。
- 官報公告料
- 申立手数料(印紙代)
- 郵送料
- 通信費等
などがあり、現金で支払います。
- 官報公告料は民事再生(個人再生)の場合12,268円、自己破産の場合15,000円。
- 申立手数料は民事再生(個人再生)の場合1万円、自己破産の場合1,500円です。
また、民事再生(個人再生)の場合、民生委員へ支払う報酬として15万円~25万円を現金で支払う必要があります。
弁護士費用は高くても、債務整理の依頼は不可能じゃない!
債務整理に踏み出すことのできない原因の1つは、高額な弁護士費用にあると思われます。
任意整理にしても着手金が10万円~20万円というのが一般的です。依頼をしただけでもかなりの金額がかかります。自己破産にいたっては着手金が20万円~30万円になります……。
債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)を検討する債務者は、お金がないから債務整理を検討しているわけです。
着手金が高額の場合、成功報酬は無料になるケースがありますが、借金まみれ、通帳の残高数百円という債務者にこれだけのお金が払えるわけがありません。
債務整理の費用が支払えるカラクリ
- 分割払い・後払い
- 受任通知の送付
この2つです。
分割払い・後払い
弁護士も司法書士も、借金問題で相談に訪れる債務者に対して債務整理の費用の一括請求を求めるわけがありません。
なぜなら、支払い能力がすでに破たんしているのですから、逃げられてしまうのが関の山です。
これにより、高額な債務整理の弁護士・司法書士費用を支払うことが可能となります。
受任通知の送付
そして、分割払い・後払いよりも、こちらの「受任通知の送付」の方が重要です。
受任通知が送付された月から、債務者は一時的に借金の返済義務が停止になります。
なぜ、受任通知を受け取ると取立てや催促ができなくなるのか?
なぜ、受任通知を受け取ると債権者は取立てや催促ができなくなるのか、それは法律で決められているからです。
貸金業法第21条第1項9号に、受任通知に関する決まりが定められています。(貸金業法全文)
ということが、お金を貸す貸金業者を縛る法律によって決められています。
罰則もしっかり定められていて、貸金業法第21条第1項9号に違反して、債権者である貸金業者が借金の取立てをしてしまった場合、
貸金業法のもと、正当に貸金業を営んでいる貸金業者であれば、受任通知を受け取った後に取立てなど怖くておこなうことができるはずがありません。
受任通知送付から分割支払いまでの流れ
たとえば、任意整理の相談を12月におこない、費用が20万円かかるとします。これを5ヶ月で返済する契約を結んだ場合、下記のような返済スケジュールになります。
1月に受任通知を各債権者へ送付しますので、1月から借金の返済義務が一時的に停止されます。
↓
2月から返済が開始され毎月4万円の返済を6月までします。
↓
この5ヶ月間の内に和解交渉をおこない、相談をした弁護士・司法書士に完済をしてからリスケジュールされた借金の返済を債権者へおこないます。
受任通知送付の注意点
受任通知を送付する際の注意点ですが、口座を開設している銀行から借金をしているときです。
そのため、口座の残高があるのであれば、受任通知を送付する前に出金しておく必要があります。また、当然ですが口座凍結後、口座からの出金をすることができなくなります。
それでも、司法書士や弁護士へ費用が支払えない場合
このような、債務整理をしたくても司法書士や弁護士へ支払う報酬の目途が立たなく、挫折してしまうケースも当然存在します。
民事法律扶助制度とは?
この制度を利用すれば、手持ちのお金が無くても債務整理の手続きをすることが可能です。ただし、収入と資産において一定の基準を満たす必要がありますので、その点は留意してください。
また、民事法律扶助制度を利用した場合、司法書士や弁護士へ支払う報酬額を大幅に安くすることも可能です。
たとえば、民事法律扶助制度を利用した場合、任意整理をして借金の減額に成功したら発生する減額報酬が発生しません。
- 司法書士なら86,400円
- 弁護士なら129,600~275,657 円
の報酬を支払うことで利用することが可能です。つまり、民事法律扶助制度を利用した場合、費用面でかなりの優遇処置を受けられます。
現在では分割払い・後払いを採用している法律事務所・司法書士事務所が増えていますので、法テラスを利用した方が費用は安いのか、相談した法律事務所・司法書士事務所の方が安いのかを比較して検討をしましょう。
債務者が個人で債務整理をする場合の費用
債務者が個人でおこなえる債務整理は「自己破産」のみです。そのほかの債務整理も知識があれば不可能ではありませんが、専門的な知識、債権者との交渉などが伴いますので困難を極めます。
その場合の費用
その場合にかかる費用ですが、前述した裁判所へ支払う予納金のみが必要になります。
しかし、持ち家などの財産を持っている場合、管財事件となり破産管財人が選任されます。もし、破産管財人が選任される管財事件となった場合は裁判所ごとに異なりますが、15万円~20万円を破産管財人へ支払う費用が必要になります。
裁判所によって異なりますが、用意可能な現金を予納金の一部として裁判所に納めることで、破産事件として一応受理しておき、予納金が全額用意できた時点で破産手続開始決定をする方法もあります。
自己破産の申立てをすることで裁判所から受任通知が債権者へ送られます。結果、貸金業法第21条第1項9号により、貸金業者は借金の取立て、催促をすることができなくなります。その間、予納金を集めることができます。
まとめ
債務整理をする場合、費用面はとても気になるものです。
- 着手金
- 成功報酬
- 減額報酬
などの費用が発生します。
そして、これら費用は一括で支払うのは非常に困難な費用です。
また、民事再生(個人再生)・自己破産の場合、裁判所へ納める予納金などの実費が別途必要になります。
さらに、弁護士や司法書士へ依頼をすると受任通知が債権者へ送付され、これを受け取った債権者は借金の取立て、催促を債務整理が終わるまではできません。
これらのことから、弁護士や司法書士への依頼の費用は、そこまで気にすることなく利用することができます。
もし、そのような弁護士や司法書士が近くにいない場合、法テラスを利用すれば民事法律扶助制度により費用を立て替えてくれます。
弁護士費用は着手金だけでも10万円~30万円? 無理無理。
借金で金がないのにどうやってお金を用意すればいいんだ?