今回は債務整理をすると会社にばれてしまうのか、という点について解説をしていきます。会社にばれたらクビになってしまうのではないのか? 転職活動をする場合ネガティブな印象を転職希望先の会社に与えてしまうのではないのか、債務整理と会社についての疑問などを、考えられる限り解決していきます。
目次
債務整理をすると会社にばれる?
債務整理は、様々な種類があります。
- 任意整理
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
一般的に利用される債務整理はこの3つです。
特定調停も債務整理の方法としてありますが、任意整理に似ているものであり、任意整理の交渉で詰まったら利用されるというケースが多くなります。進んで利用するものではあまりありません。
では、債務整理である、任意整理・民事再生(個人再生)・自己破産をすると会社にばれてしまうのでしょうか?
ただし、自己破産をするために破産手続開始申立てを裁判所へおこなったとしても、裁判所から勤務先の「会社に○○さんは自己破産の手続きを始めます」といった通知が行くことは原則ありません。
任意整理や民事再生(個人再生)をおこなったとしても、債権者や裁判所から同様の通知が会社へ送付されることはありません。
債務整理をしたことがばれたらクビになるのか?
債務整理をしたとしても、クビになることはありません。後述する自己破産などは解雇される可能性はありますが、一般企業の場合、債務整理をしたことを理由に解雇されることは、労働基準法にて禁止されています。
そのため、債務整理をしたことを理由にクビにされた場合、不当解雇として訴訟を起こすことが可能です。
つまり、債務整理をしてもクビにはなりません。
債務整理をせずに滞納を続けていると会社にばれるリスクが高まる
一方で、債務整理をすると会社にばれてしまうのではないのかと考えて、債務整理の手続きをどれもとらず、滞納を続けた場合はどうでしょうか。
裁判を起こされた場合、滞納をしている債務者は100%負けます。なぜなら、借金を返済する契約をはたしていないので、腕利きの弁護士を雇ったとしても勝ち目はないでしょう。
裁判に勝った債権者は財産を差し押さえることができます。財産といえば、住宅や車などを真っ先に思い浮かべるかもしれませんが、住宅や車などは換金処分する手間がかかります。
そこで、債権者は真っ先に債務者の「給料」という財産を狙います。給料というものは立派な財産なります。
毎月定期的に必ず支払われるものですし、支払うのはきちんとした会社ですから、給料をとりはぐれることがなく、効率的に借金を回収することができるので、給料を差し押さえれば効率的に借金を回収することができるというわけです。
給料の差押えを受けた場合100%会社に借金を抱えていることがばれます。ただし、会社にばれたとしても解雇される可能性はありません。会社に借金を抱えていることがばれたうえで、給与を全部返済したという猛者もいます。
理解のある会社であれば、借金の差押えについての状況などを考慮のうえ容認してくれることもありますが、一般的には厳しい対応をとることが多くなるでしょう。
借金の返済が厳しくなり、滞納を始めた場合、債務整理の中でもっとも難易度の低い任意整理を検討しましょう。それと同時に債権者が訴訟を起こしていないか、裁判所からの郵便物に注意を払う必要があります。
債務整理を弁護士に依頼すると債権者は訴訟が起こせなくなる
債務整理を弁護士や司法書士へ依頼をすると「受任通知」というものを、債権者へ送付してくれます。受任通知を書面で受け取った債権者は債務者へ借金の督促や取立、差押えをすることができなくなります。
原則・会社へ債権者は取立に来ない
これは余談です。
もちろん、会社に借金をしている事実をばらすということもできません。会社まで取立に行くことは禁止されているのです。
ただし、これは貸金業法の下で貸金業をおこなっている正当な業者の話であり、存在自体が違法な闇金の場合、貸金業法を守る必要がありませんので、会社へ取立に来る可能性もあります。
債務整理をすると官報に載るがそこから会社にばれる可能性は?
債務整理の中で、民事再生(個人再生)と自己破産は裁判所を間に挟んで手続きをする関係で、官報という国が発行する新聞紙に名前や住所が載ります。
ただ、債務整理の任意整理の場合は、裁判所を利用した手続きではなく、債権者と債務者の話し合いにより借金を整理する債務整理方法になりますので、官報に名前や住所が載ることはありません。
債務整理の自己破産の場合、会社にばれる可能性は?
給料(財産)が処分の対象になる
債務整理の中で、もっとも債務整理の効力が強いのが自己破産です。自己破産をおこなうと税金など納付の義務がある負債以外はすべて帳消しになります。
財産を持っている場合は、一定額以上の財産を処分しなければなりません。不動産や20万円以上の価値のある車は換金処分の対象になります。換金処分された財産は債権者へ平等に配当されます。
前述したとおり、給料も財産になりますので、給料の4分の1を差し押さえられる可能性があります。また、33万円以上の給料を支払われているとき、33万円を差し引いた額を差し押さえることも可能です。
- 給料の4分の1
- 33万円以上の給料が支払われている場合は33万円を差し引いた額
これのどちらか大きい方を差し押さえられてしまう可能性があります。
ただし、処分の対象となる給料は、破産手続開始決定時点で発生しているものだけであり、そうでない給料などは換金処分の対象にはなりません。
では、自己破産を選択したら、給料が差し押さえられてしまうのであれば、会社に自己破産をしたことがばれてしまうのではないのだろうか? と心配になってしまいます。
そのため、自己破産をした場合、給料を債権とみなして換金処分の対象にすることは、まずありません。つまり、事実上、自由財産の拡張がなされ、自由財産(債務者の財産)として取り扱われます。
つまり、給料の4分の1を差押えられることはありませんし、給料の4分の1相当金額を納めるように請求されるという心配もありません。
ただし、支払われている給料の額が高額であれば、換金処分の対象になる可能性があります。
自己破産は職業の制限を受ける
自己破産をした者は、免責許可の決定を得て復権をするまで「破産者」となります。
自己破産にもいろいろと種類があり、破産手続費用を支払うのに足りない財産しか持っていない場合は同時廃止事件という手続きの自己破産になります。この場合は、破産者の期間は3ヶ月~半年程度の期間です。
一方、住宅などの不動産など換金処分することのできる財産を持っている場合、管財事件と呼ばれる手続きになり、半年~1年程度の期間が破産者となります。
また、少額管財事件というものがあります。これは弁護士に依頼をしていないとできないのですが、管財事件であっても短期間で終了させることができ、4ヶ月~半年程度の期間が破産者となります。
破産者は、様々な制限を受けるのですが、その一つが職業の制限、資格制限です。
- 弁護士
- 弁理士
- 公認会計士
- 税理士
- 公証人
- 司法書士
- 行政書士
- 土地家屋調査士
- 不動産鑑定士
- 通関士
- 宅地建物取引士
- 公証人
- 人事院の人事官
- 国家公安委員会委員
- 都道府県公安委員会委員
- 検察審査員
- 公正取引委員会委員
- 商品取引所会員
- 建設工事紛争審査委員会委員
- 教育委員会委員
- 商工会議所会員
- 割賦購入あっせん業者の役員
- 賃金業者の登録者
- 質屋
- 旅行業務取扱の登録者や管理者
- 生命保険募集人
- 警備業者の責任者や警備員
- 建築業を営む者
- 下水道処施設維持管理者
- 風速業管理者
- 廃棄物処理業者(一般・産業・特別管理産業)
- 調教師や騎手
制限を受ける職業の一部になります。
また、警備員のようなお金を輸送するなど、お金に関係のある職業は破産者では就くことはできません。
- 一度退職したのちに復職
- 警備員ではなく事務職などに一時的に配置換え
などの措置をとられることがあります。
ただ、一般的には退職して、復権を果たしたのちに復職となります。
破産者と知っていても知らなくても、破産者が警備員などをおこなっている場合、破産者が務めている職場が処罰の対象になります。
自己破産は借金のほぼすべてを帳消しにするものですが、このように制限を受けることがありますので、債務整理の中でも最後に検討をするべきものであるといえます。
債務整理をすると転職に影響がある?
債務整理をしたのちに、転職をする場合、債務整理をした事実は転職に不利に働くことがあるのかといえば、転職先によります。
また、信用情報機関などへの転職も不利である可能性があります。
また、履歴書に債務整理をした事実を書く必要もなければ、企業との面接において債務整理をしたというプライベートな問題を聞いてくることもありません。自分から進んで話す必要もないのです。
まとめ
債務整理をすることで、会社に借金を抱えていることがばれてクビにされてしまうのではないのか、不利になるのではないのか、と考える方もいるとは思います。
しかし、債務整理をせずに債権者が裁判を起こした場合、給料を差押えされてしまいますので、債務整理をしない方が会社に借金をしていることがばれる可能性が高くなります。
債務整理をしても、普通の会社であればまず債務整理をした事実がばれるということは、自分から進んで話さない限りはありません。
しかし、債務整理の自己破産をした場合、破産者となり破産者は就くことのできない職業があります。そのような場合は、申告しなければなりません。また、自己破産をした時点で解雇をすると就業規則で決めている会社もあります。
また、転職において債務整理をしたという過去は、金融関係・信用情報機関などへの転職を不利にしますが、その他の職種では転職の審査に影響を及ぼすことはないでしょう。債務整理をした旨の話題を面接で聞かれることもなければ、履歴書などに書く必要もないのですから、債務整理をしたとしてもまず影響はないでしょう。