現在、借金を苦にして自殺をする方が後を絶ちません。借金に自由を縛られ、借金の返済のためだけの生活から解放される方法の1つが「債務整理」です。借金をして返済をしたくても返済できなくなったときに利用することができる債務整理とはどのようなものか説明いたします。債務整理を正しく知ることで、明るい未来を得ることができるでしょう。
目次
債務整理とは?
債務整理とは、「債務」つまり借金を整理する法律で守られた解決方法です。この債務整理についての知識があるかないかで、借金問題が苦しくなります。そして、借金問題で思い悩んでいる方の多くが債務整理を利用することで得られる恩恵をあまり知らないという事実があります。
「債務整理」とは、下記の手続きの債務処理の総称です。
- 任意整理
- 特定調停
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
選択肢については、司法書士や弁護士が整理方法を検討してくれるのですが、最終的には債務者が借金をどのようにしたいかで、選択肢が変わります。たとえば、借金を全額なくしたいという方が選ぶ債務整理の方法は「自己破産」となります。
実際問題、自己破産から発生するネガティブな知識の多くが誤った知識です。自己破産という名前はポジティブではありませんが、借金問題から債務者を解放してくれる方法の1つです。名称はネガティブですが、自己破産という制度は非常にポジティブな内容の制度となります。
債務整理は起死回生の一手
任意整理・特定調停・民事再生(個人再生)・自己破産といった、債務整理の方法がありますが、債務整理とは法的に借金を一度見直しができます。
借金を無理なく返済をして、現在の苦しい生活から元の無理のない生活を送ることができる、借金により狂ってしまった人生を再生させるものです。
繰り返しますが、債務整理は複数の手続きがありますが、どれも借金で困っている債務者を助け、守るための解決手段です。正しい、債務整理の知識を持つことが借金問題の解決の近道になるといっても過言ではありません。
債務整理の注意点
自身の借金の状況により債務整理の方法は異なる
債務整理は、任意整理・特定調停・民事再生(個人再生)・自己破産の4つの中から、自分の借金の状態にあったものを選ぶ必要があります。
任意整理・特定調停・民事再生(個人再生)については、借金を減額して、返済期間などをリスケジュールすることができますが、借金を全額が帳消しされるものではありません。全額を帳消しにするのであれば、自己破産を選択するしかありません。
債務整理は借金を減らす、帳消しにして新しく人生をやり直すことができる大きなメリットがあります。ただ、適当に選んでしまうと自分の財産を処分しなければならないことになる可能性もあるので注意をしましょう。
ブラックリストに載る
債務整理を利用すると金融事故を起こしたことになりますので、信用情報機関にブラックリストに一定期間名前が載ります。
官報に名前が載る
債務整理の中には、裁判所を利用して手続きをおこなうものがあります。そのため、官報に名前が載ります。
そのため、官報を集めている人には債務整理をした事実がばれてしまう可能性があります。しかしながら、官報に名前が載ったからといって職場などで不利になるケースはありません。また、官報そのものに目を通す一般人はあまりいませんので、そこまで大きなデメリット・注意点となるものではないでしょう。
ウソや誤解が蔓延しているので注意
債務整理ですが、非常にウソや誤解、勘違いの情報が流布されています。自己破産をした場合、選挙権が停止される、住民謄本に自己破産した事実が書かれる、会社を馘首されるなど、ウソや誤解がまことしやかに流されています。
その結果、債務整理をすべき段階において債務整理を選択することができず、自殺などの最悪な結果に突き進むケースも見受けられます。自己破産などは持っている財産を処分する代わりにすべての借金を帳消し、清算をしてゼロからのリスタートが切れる制度です。
一定期間、信用情報機関のブラックリストに名前が載りキャッシングなどを利用することができませんが、10年程度我慢をすればブラックリストから名前が消され、探偵などの専門家が官報を調査しなければ自己破産をした事実など知りようがありません。
債務整理をすることで人権侵害を受けることもなければ、迫害されることもありません。その後、経済を立て直せれば誰も文句をいいません。
債務整理の「任意整理」について
債務整理の1つの方法である、任意整理については説明をします。
任意整理については、取引開始時にさかのぼり、改正貸金業法施行前の出資法にもとづく上限利息であれば、利息制限法の上限利息である15%~20%に金利を引き下げて再計算をして、過去に払い過ぎている利息を元本に充当して、借金の総額を減らすことができます。しかし、利息制限法内に金利を設定している場合、再計算をして借金の減額はできませんので注意をしましょう。
また、利息制限法にもとづく引き直し計算により減額した後、将来に発生する利息をカットして分割払いをするという交渉や、過払い金の利用、もしくは家族からお金を借りて借金を一括返済するなどの交渉により借金総額を減額できないかという交渉をします。
任意整理のメリット
任意整理の和解交渉は、弁護士・司法書士が代理人としておこなうのが一般的です。裁判所などの公的機関を間に挟まないので手続きが比較的簡単ではありますが、その分、弁護士・司法書士の力を他の債務整理よりも必要とします。
任意整理とは債権者と話し合いをすることで現在の借金額を圧縮して、毎月の利息や毎月の支払を減らすというものです。現在の借金返済額に無理があり生活が厳しいけれども、安定した収入があり、きちんと借金を返済したいというという方には極めて向いている債務整理の方法です。
裁判所などを利用する必要がないので手間がかからず、官報に名前も載りませんので他人に任意整理をした事実はばれません。
また、すべての債権者を対象にする債務整理ではなく、特別「金利の高い」業者を相手に任意整理をすることも可能です。
任意整理のデメリット
金融業者が利息制限法の上限金利内で金利を設定している場合、利息の引き直し計算をしても借金の減額自体はおこなわれません。
借金そのものをなくしたいという人には、任意整理は不向きです。また、債務整理は金融事故になりますので、信用情報機関のブラックリストに7年間ほど名前が載りますので、この間のクレジットカードをはじめとした借金の利用は不可能となります。
債務整理の「特定調停」について
特定調停が成立した場合、裁判所が調停調書を作成します。これは公文書に分類されますので、債権者は調停調書どおりにしか取立てることができません。しかし、調停調書どおりに債務者が返済できない場合、債権者は強制執行をおこない容易に差押えをすることが可能になります。
債務整理の「民事再生(個人再生)」について
民事再生(個人再生)は、民事再生法という法律で定められた借金の救済制度です。裁判に申し立てる必要はありますが、裁判に申し立てることにより、最低弁済額という基準額まで借金の減額が可能です。
民事再生(個人再生)は、自己破産と任意整理の中間のような制度です。自己破産をした場合、借金がすべて帳消しになりますが、自身の不動産(家)や自動車などの財産を処分しなければなりません。
そのため、民事再生(個人再生)は、不動産(家)を絶対に処分したくないけど、借金の減額をしたいという方には向いている債務整理の1つです。また、民事再生(個人再生)も住宅ローン特別条項のように住宅ローンの返済に窮した方向けの制度になっているともいえます。
住宅ローンと民事再生(個人再生)
民事再生(個人再生)は、特に住宅ローンのような高額な任意整理を利用しても全額返済することが難しいローンがある方に向いている債務整理の1つです。
住宅ローンを利用して家を建てた場合、自己破産をしてしまっては、建てた家を処分する必要があります。しかし、民事再生(個人再生)の場合は家を手放す必要がなく、生活を再建することのできる債務整理の方法になります。
民事再生(個人再生)の住宅ローン特別条項は、住宅ローンを残したまま、他の借金だけを個人再生で減額することができるのです。
ただ、住宅ローンの減額はなく、住宅ローンのみは今までどおり全額返済をすることになります。ただし、返済のリスケジュールなどを期待することができます。そのため、住宅を絶対に手放したくないという方には向いている債務整理の方法といえます。
民事再生(個人再生)をするための条件
民事再生(個人再生)をするために、下記の条件を満たす必要があります。
- 破産に準ずる経済状態にあること
- 住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円以下であること
- 保証会社の代位弁済から6ヶ月以内であること
- 将来的に継続、反復して収入を得る見込みがあること
民事再生(個人再生)は、基本的に借金の総額を圧縮して、決められたスケジュール内に返済をする必要がある債務整理の方法です。そのため、再生計画に基づいた返済が可能な家計、つまり、収入から支出を差し引いて最低でも3万円程度の余剰金がなければ、民事再生(個人再生)を申込むことは難しくなります。
上記の条件を満たしており、かつサラリーマンの場合には特例で手続きが簡略化されます。
最低弁済額について
民事再生(個人再生)は、法律で定められた最低弁済額まで借金を減額することができます。この最終弁済額には住宅ローンは含まれません。住宅ローンを除いた借金の額となります。
- ~100万円未満の借入:減額不可
- 100万円~500万円未満の借入:100万円
- 500万円~1500万円未満の借入:債務額の5分の1
- 1500万円~3000万円未満の借入:300万円
- 3000万円~5000万円未満の借入:債務額の10分の1
民事再生(個人再生)の費用
民事再生(個人再生)をする場合、費用として30万円~50万円程度がかかります。裁判所へ申立てる費用自体は2万円程度なのですが、個人再生委員という弁護士が選任されますので、その弁護士に支払う費用などが15万円~20万円程度かかります。
東京地裁の場合、必ず個人再生委員が選任されますし、再生計画に不備があると不認可となりますので、弁護士に依頼をしておくとスムーズに、そして、確実に民事再生(個人再生)を実行できるでしょう。
民事再生(個人再生)のデメリット
民事再生(個人再生)のデメリットとしては、住宅ローンの減額をすることができない点です。また、住宅ローン以外の借金についても原則3年以内に完済する必要がありますので、返済計画というのが重要になります。
また、裁判所に申し立てをおこないますので、官報に名前が載ります。この官報は一般人が目にする機会というのはそこまであるものではないので、非常に気にするものではありませんが、気になる方にとってはデメリットです。
さらに、民事再生(個人再生)は金融事故として扱われますので、信用情報機関のブラックリストに約5年~10年程度は名前が載り、その間、新しくローンを組むことできなくなります。
債務整理の「自己破産」について
自己破産については、自身の財産を処分しなければなりませんが、借金(税金、養育費などの非免責債務を除く)をすべて帳消しにすることができます。
自己破産は、任意整理、民事再生(個人再生)をおこなったとしても、全額の返済が難しいほど多額の借金を抱えている場合に、地方裁判所へ破産申立書を提出することで、現在抱えている借金を帳消しにすることができる債務整理の1つの方法です。
一定の財産を持っている場合、手放す必要はあります。しかし、自己破産をおこなうことで多重債務から逃れることが可能であり、そのような人々を救うために国が作った救済法であるといえます。
2種類の自己破産
自己破産は下記の2つの種類があります。
- 同時廃止
- 管財事件
管財人の選任の際には、管財人費用として20万程度を裁判所へ予納する必要があります。これは、地裁ごとにより費用が異なります。管財人により資産の現金化がおこなわれ、現金化の際には売却の他に、保険の解約、将来的に支払われる退職金の一部などが組み込まれることもあります。
自己破産のメリット
自己破産のメリットは、財産を処分する代わりに借金を全額帳消しにします。もちろん、財産を処分するといっても、無一文になるわけではありません。99万円の現金までは手元に残すことが可能です。
その他にも下記のものは残せます。
- 家具・家電・日用家財
- 評価額20万円以下の自動車
- 20万円までの保険・預金
- 破産開始後に取得した財産
自己破産のデメリット
自己破産については、裁判所を利用する債務整理と同じように官報に名前が載ります。また、10年程度は信用情報機関のブラックリストに名前が載り、その間、ローンやキャッシングの利用が不可能となります。これらが基本的なデメリットであるといえます。
制限される資格がある
また、保険外交員、証券外交員などの資格も業務禁止にされる場合があります。
ただし、自己破産の免責決定と同時に復権は可能です。
職業に一時的に制限がかかる
会社役員の資格を失うことになりますが、免責決定後に復権は可能です。
保証人への影響
債務者が自己破産をしても保証人には影響がありません。そのため、自己破産をした債務者に代わり保証人が保証債務を追求されることになります。結果として、保証人も破産をするなど、破産の連鎖が起こる可能性があります。
保証人のことを踏まえて自己破産を検討することをおすすめします。
ギャンブルが原因の借金は自己破産できない
また、財産があるのに財産を隠して破産申立てをした場合、免責不許可事由とされます。
ただ、財産を隠すなどしている場合を除き、実際に免責不許可となるケースは少なくなります。
まとめ
- 任意整理
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
任意整理は裁判所を間に挟まずに債務者と金融業者との話し合い、また、利息制限法の上限を利用して、借金の額を圧縮するものです。
民事再生(個人再生)と裁判所に申し立てることにより、借金を最大で10分の1まで圧縮することが可能です。住宅ローンをはじめとした財産を守りつつ借金額を圧縮するには向いています。
任意整理と民事再生(個人再生)は、返済する借金の額を減少させることが可能ですが、借金の返済をしなければいけません。
そして、自己破産は破産が認められた場合、借金の返済義務が免責されます。
債務整理については、借金に狂わされていた人生を清算するための有効な手段です。ウソや誤解、偏見などに騙されることなく、しっかりと情報を取集していき、リスタートのために有効に利用してください。