債務整理をして早く借金を減らしたいと考える方が多くいますが、実際の手続きはどのくらいの期間かかるのでしょうか。債務整理は手続きの方法により、かかる時間に大きな差があります。また、債務整理の中には、債務整理の手続き中に生活に制限が加えられるものもありますので、しっかりと選ぶ必要があります。
目次
債務整理について
- 任意整理
- 特定調停
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
この4つの借金整理の総称のことです。
そして、一口に債務整理といいましても、手続きにより終了までの期間が異なります。また、自分でおこなう場合と専門の弁護士や司法書士へ依頼をしておこなう場合でもかかる期間が異なります。
ただし、あまり個人でおこなうことはおすすめしません。弁護士や司法書士のような専門家へ依頼して債務整理は実行するべきです。その道のエキスパートに依頼をすることで、個人的に実行するよりも高い確率で成功します。そもそも、個人が仕事の片手間でおこなうには手続きが煩雑すぎる債務整理もあります。
任意整理にかかる期間
任意整理は、裁判所を介さずにおこなう唯一の債務整理の方法です。つまり、私的な話し合いにより和解を目指すというものです。任意整理は債務整理の中ではもっとも敷居が低く、利用しやすいというメリットがあります。しかし、任意整理の交渉をしたとしても確実に和解するとは限りません。
また、敷居が低く利用しやすいのですが、借金のリスケジュールと将来利息のカット、遅延損害金の免除など借金返済の負担を軽くするものです。
任意整理は、一般的に複数の債権者を相手におこないます。そのため、債権者ごとに交渉に要する期間は異なってきます。また、手続きの期間については、交渉の内容や債権者の対応により、大きく変動をする可能性があります。
あくまでも私的な話し合いで和解を目指すものですから、和解条件に債権者が納得しない場合もあり、その場合、任意整理は不成立となります。債権者によって納得しにくい内容では交渉期間が長くなる可能性があります。
任意整理の流れ
- 専門家へ依頼
- 受任通知の送付
- 債務調査・整理案の作成
- 貸金業者との交渉
- 業者の同意と承諾
1.専門家へ依頼
任意整理は、個人で実行しようと思えば可能ですが、弁護士や司法書士へ依頼をするのが確実で無難です。専門的な知識を必要としますので、仕事の片手間におこなうのはまず不可能です。
2.受任通知の送付
弁護士や司法書士へ依頼をすることで受任通知というものを送付できます。受任通知を受けとった場合、金融機関は取立をすることができなくなります。
3.債務調査・整理案の作成
債務者の手元にある借用書や領収書などから、借入や返済した年月日、また金額などを調査します。そして「債務調査票」というものを作成します。また、調査票から利息制限法に基づき計算(引き直し計算)をして過払い金の有無を調べ、残債務額を確定させます。
その後、整理案・弁済案を作成して債権者へ送付します。
これにかかる期間が1ヶ月~2ヶ月程度です。
4.貸金業者との交渉
貸金業者との交渉を整理案・弁済案をもとにおこないます。
交渉期間は前述の通り、債権者により異なりますが、2ヶ月~4ヶ月の期間を必要とするのが一般的です。交渉が難航する場合は、弁護士が別の債務整理案を提案することもあります。
5.業者の同意・承諾
貸金業者と交渉をして、同意を得られたら返済の開始となります。
一般的に、整理案と合わせて整理案の承諾書を債権者へ送付して、承諾書が返送され、それを確認したら返済を開始します。
特定調停にかかる期間
特定調停は、個人で簡易裁判所へ申立てることで実行することのできる債務整理の手続きです。
ただ、任意整理と内容が同じであり過払い金返還請求などをすることができないので、あまり利用はされていない債務整理の方法です。
実行するためには、債権者の一覧と財産の状況がわかる書類を簡易裁判所に提出をする必要があります。申立てが受理されたのち、裁判所から特定調停の期日が指定され、日程に合わせ裁判所に出頭しなければなりません。
債権者と債務者は別々の個室へ分けられ、調停委員が互いの意見を聴取し、債権者と債務者の意見を調整します。特定調停にて債権者と交渉が成立すれば終了です。
しかし、債権者が同意をしなければ交渉は不成立となります。
裁判所に出頭するなど時間はかかりますが、特定調停自体は3ヶ月~4ヵ月程度で終了します。
特定調停の流れ
- 特定調停の申立て
- 調停期日の指定
- 簡易裁判所への出廷(1回)
- 簡易裁判所への出廷(2回)
- 調停成立もしくは調停に代わる決定
1.特定調停の申立て
原則として、債権者の住所のある簡易裁判所に申立てをおこないます。
2.調停期日の指定
調停申立書を提出後、2~3週間程度すると簡易裁判所から調停期日が指定されます。
3&4.簡易裁判への出廷(1回~2回)
調停期日として指定された日に簡易裁判所へ出頭をします。最低2回出頭をする必要がありますが、場合によって3回以上、出頭しなければならないこともあります。交渉の進展具合により、この期間は変わります。
5.調停成立または調停に代わる決定
調停委員が示した案で双方合意をすれば、それで調停終了です。合意に至らない場合、裁判所から調停に代わる決定が下されます。この決定に対しても納得がいかない場合、調停不成立となります。
民事再生(個人再生)の期間
民事再生(個人再生)は、任意整理や特定調停をおこなっても借金の返済が困難な場合に選択する方法であり、裁判所に申立てることで実行されます。民事再生(個人再生)の特徴として、借金の額に応じて借金の減額幅が大きくなる点です。
民事再生(個人再生)は借金の総額が5000万円を超える場合は利用できませんので注意をしましょう。
- 小規模個人再生
- 給与所得者等再生
この2つの手続きがありますが、一般的には「小規模個人再生」が利用されています。
小規模個人再生の場合、債権者の意見がある程度反映されますが、全ての債権者から同意を得る必要はなく、裁判所が手続きを認めたら債権者が反対しても借金の減額が実行されます。基本的に反対する債権者は多くありません。
さらに、民事再生(個人再生)の場合、弁護士へ依頼することで手続きの期間を短くすることができます。弁護士へ依頼していない場合、裁判所が個人再生委員という弁護士を選任します。この弁護士ですが意見やサポートをする程度であり、債務者の利益のためには動いてくれません。あくまで中立の立場です。
弁護士を雇うことで個人再生委員の代わりを勤めますので、個人再生委員の選任がなくなるケースがあります。ただし、東京地裁の場合は必ず個人再生委員が選任されます。
民事再生(個人再生)の流れ
- 申立て
- 民事再生(個人再生)の開始決定
- 再生計画案の作成
- 再生計画案の認可決定
1.申立て
地方裁判所へ出向き、再生手続開始の申立てをおこないます。再生手続開始の原因を明らし、債権者一覧などの必要書類の他に、民事再生(個人再生)後に予定している返済金額を裁判所へ申告する必要があります。
また、小規模個人再生なのか給与所得者等再生なのかの選択もおこないます。
個人再生委員が選任される場合、申立てから1~2週間後程度に個人再生委員との面接があります。
2.民事再生(個人再生)の開始決定
裁判所が強制執行禁止命令やその他手続きの中止命令が出します。その後、再生手続決定をします。
また、再生手続決定の時点で「官報」という国が発行する公報紙に名前などが掲載され公告されます。また、裁判所への再生債権の届け出と再生計画案の提出をおこないます。
個人再生委員が選任されていない場合、2週間で民事再生(個人再生)の開始決定となります。個人再生委員が選任された場合、1ヶ月程度の時間がかかります。
3.再生計画案の作成
再生計画案とは、減額された残りの借金をどのように返済していくかの計画案です。
4.再生計画案の認可決定
小規模個人再生の場合、債権者から認可を受けた場合、民事再生(個人再生)の手続きが完了します。
自己破産の期間
たとえば、不動産のようなものを持っていると任意売却もしくは競売にて処分をして債権者へ配当しなければならず、1年程度の時間がかかります。この破産の手続き中には、債務者は「破産者」となり、職業の制限、移動の制限、郵便物の秘密の制限など、多々制限を受けることになります。
破産者の状態は免責許可の決定を受けることで、復権を果たし終了となります。
財産を持っている状態で自己破産をすると「管財事件」と呼ばれ、自己破産の手続き期間は長くなります。近年では管財事件が長すぎるとして、「少額管財事件」という手続きも運用されています。
利用できる場合、4ヶ月~6ヶ月程度で手続きが終了します。
そして、一般的に20万円以下の財産しかなく、現金も99万円以下しか持っていない場合は同時廃止事件と呼ばれる自己破産の手続きになります。同時廃止事件の場合、2ヶ月~6ヶ月程度で手続きが終了します。
- 管財事件:6ヶ月~1年
- 少額管財事件:4ヶ月~6ヶ月
- 同時廃止事件:2ヶ月~6ヶ月
このような期間で終了します。
自己破産は他の債務整理とは異なり、税金など免除されない借金以外、全額借金が免除されますので、返済期間はありません。手続き終了とともに借金返済も終了です。
自己破産の流れ
- 自己破産の申立て
- 破産手続きの開始決定/同時廃止の決定
- 財産の換金処分
- 免責審尋
- 免責許可の決定(復権)
1.自己破産の申立て
地方裁判所へ自己破産の申立てをします。
2.破産手続きの開始決定/同時廃止の決定
申立てをしてから1ヶ月~2ヶ月程度で破産手続き開始の決定がなされます。
ここで財産を持っていない、つまり同時廃止事件の場合、破産手続き廃止が同時に決定されます。そのため、同時廃止事件の場合、財産の換金処分をせずに免責審尋へ移ります。
また、官報に掲載されます。
3.財産の換金処分
破産管財人主導のもとで、20万円以上の価値のある財産、99万円以上の現金は換金処分されます。
ただし裁判所により、運用の基準が異なります。そのため、どのようなものが処分されるのか事前に弁護士などと相談をしておくといいでしょう。
財産の換金処分が終了した時点で、債権者集会というものが裁判所で開かれます。この債権者集会は名目上、債権者からの意見聴取の場ですが、基本的に債権者は来ることはありません。
また、少額管財事件の場合、債権者集会と同時に免責審尋がおこなわれます。
4.免責審尋
免責審尋は、借金の免除をしていいのかどうかを調べる場です。とはいいましても、1人30秒程度で終了します。また、書類がしっかりしていれば出頭する必要なく終わることもあります。
5.免責許可の決定(復権)
免責審尋から10日前後で官報により公告されます。
免責許可の決定を受けると同時に復権を果たし、破産者として被るすべての制限はなくなります。
これにて、自己破産の手続きはすべて終了です。自己破産はすべての借金を帳消しにする手続きなので、借金の返済義務はなくなります。
まとめ
- 任意整理
- 特定調停
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
この4つの借金整理の総称のことです。
そして、債務整理の手続きの期間については、種類によって大きく異なります。しかし、どの方法を選択しても、手続き開始から長くても1年前後で必ず債務整理の手続きは終了します。
任意整理の場合は、裁判所を利用することなく私的な和解交渉により借金のリスケジュール、将来利息のカット、遅延損害金の免除などを求めるものです。平均して3ヶ月~6ヶ月の期間がかかります。
特定調停は、簡易裁判所でおこなう債務整理であり、3ヶ月~4ヵ月程度で終了しますが、現在、あまり利用されていません。
そして、民事再生(個人再生)ですが、任意整理と特定調停のように債権者の意見に左右されにくく、借金を原則として5分の1まで減額し、3年間をかけて返済をします。4ヶ月~1年程度の期間で終了します。
自己破産は、裁判所でおこなう手続きであり、裁判所が認めた場合、基本的に債権者の意見に左右されることなく借金が全額免除されます。ただし、一定額以上の財産はすべて処分しなければなりません。必要とする期間は2ヶ月~1年程度です。