自己破産は、債務整理の奥の手です。名称から利用したら人生の終わりみたいな印象のある自己破産ですが、自己破産の法的根拠である破産法は、利用者の経済的な救済と再生を目的としているものになります。
そのため自己破産=人生の落伍者という考えは違います。
とはいえ、どのようなメリットとデメリットがあるのかわからずに自己破産を勧められても、「あ、自分は無理っす」となります。なので、今回は、自己破産の12のデメリットと8のメリットについて解説します。
自己破産とは?
まず、自己破産について軽く説明します。
自己破産は債務整理の1つです。
- 任意整理:
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
この4種類が債務整理となります。
自己破産が他の債務整理と明確に異なる点は、3点あります。
- 自身の財産の処分
- 借金の免除
- 借金を作った理由により利用できない
この3点です。
自己破産を利用すると、「非免責債権」と呼ばれる債権、たとえば税金などを除き、借金が免除されます。他の債務整理方法を利用した場合、借金の減額やリスケジュールはありますが、全額免除されることはありません。
また、自己破産には免責不許可事由というものがあります。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
上記に記されていることをおこなってしまうと、免責許可(借金の免除)を得ることができません。これも、他の債務整理とは異なります。
自己破産のデメリット
まずは、自己破産のデメリットから紹介します。
自己破産のデメリットは、12個あります。
- 誰でも自己破産をすることができない
- 官報に名前が載る
- 5年~10年はブラックリストに載る(クレジットカード、ローン審査に通らなくなる)
- 一定額以上の財産はすべて処分される
- 免責にならない非免責債権がある
- 一部の職業に就けなくなるなどの制限がある
- 公法上・私法上の資格制限を受ける
- 保証人・連帯保証人へ与える影響が大きい
- 7年間は再度、自己破産をすることができない
- 自己破産の手続き中、居住の制限を受ける
- 自己破産の手続き中、身柄を拘束・監視されることがある
- 破産管財人によって郵便物が管理されることがある
以上12のデメリットが、自己破産にはあります。
ただし、9番目以降のデメリットは管財事件と呼ばれる自己破産の手続きの場合に受けるデメリットなので、同時廃止事件の場合はそこまで気にするメリットはありません。
1.誰でも自己破産ができるわけではない
自己破産をすることができる人は、「支払不能の状態」と裁判所に判断されなければ、自己破産の破産開始手続きの決定が下りません。例えばですが、年収1000万円あり、借金が100万円の人が、債務の免責を狙い自己破産することはできません。なぜなら、返済能力が十分にありますので、破産法で救う人には該当しません。
支払不能状態については、客観的、総合的に裁判所により判断されるため、○○万円の借金があるから支払不能状態とはなりません。つまり、明確な基準がありません。しかし、債務の返済できない状態が継続的であれば、支払不能状態と判断されることになります。
2.官報に名前が載る
自己破産は裁判所へ申し立てることにより、手続きが開始されます。
そのため、「官報」という国が発行する公報誌に下記の情報が載ります。
- 名前
- 住所
- 決定年月日時
- 主文(自己破産開始決定・免責許可決定)
- 届出期間
官報には、自己破産開始決定時と免責許可決定時のときの合計2回、名前などが掲載されます。
官報は新聞のようなものであり、毎日発刊されます。一度、名前の載った官報はしっかりと保存されます。ただし、毎日、かなりの数の破産者の名前が載っていますので、そこからピンポイントで名前を一般人が見つけることは困難です。
官報に個人情報が載る理由ですが、債権者などの利害関係者へ自己破産することを広く知らせるためです。
- 相続
- 公示催告
- 失踪
- 除権決定
- 特別清算
- 再生関係
などの公告が書かれています。繰り返しになりますが、毎日発行され、この中から知人や友人、会社の同僚があなたの名前を偶然見つけるというのは、まず考えられません。
3.5年~10年はブラックリストに載る(クレジットカード、ローン審査に通らなくなる)
自己破産は金融事故として、信用情報機関に登録されます。
- CIC
- 日本信用情報機構(JICO)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
以上になります。
- クレジットカードの利用履歴
- ローンの利用履歴
- 返済履歴
- 滞納の有無
- 他の金融機関の審査結果
などを閲覧することができます。
自己破産をすると、個人信用情報に記録として残り、クレジットカードやローン審査を通過するのが難しくなります。
ただし、一生ブラックリストに名前が載り続けるわけではなく、5年でCICとJICCのブラック情報が、10年でKSCのブラックリストから事故情報は抹消されます。
4.一定額以上の財産はすべて処分される
自己破産をする場合、下記の財産は換価処分されてしまいます。
- 99万円以上の現金
- 20万円以上の保険の返戻金・預貯金
- 20万円以上の自動車
- 所有している不動産
一般的に20万円以上の価値のある財産はすべて換価処分されてしまうと考えてもらって構いません。ただし、地方裁判所ごとに運用が異なりますので、管轄の弁護士に聞くのが一番確かな情報です。
また、20万円以上の価値があるものだとしても、それがないと生活をすることができないと破産管財人が判断した場合、自由財産の拡張がなされ例外的に所有を許されます。
5.免責にならない非免責債権がある
自己破産をしても、すべての借金が免除されるわけではないことは前述しました。それが、非免責債権です。
- 滞納指している税金(住民税・自動車税・固定資産税など)
- 下水道料金の滞納金
- 社会保険料の滞納金
- 認可保育園の保育料
- 婚姻費用
- 養育費
- 未払いの給与
- 一部の慰謝料
- 重大な過失により発生した損害賠償金
- 債権者一覧に載せなかった債権者の債権
破産法253条1項~7項に非免責債権が定められています。
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
6.一部の職業に就けなくなるなどの制限がある
破産手続開始決定から免責許可決定の間、自己破産を申立人は「破産者」になり、さまざまな制限を加えられることになります。
同時廃止事件であれば、3カ月~半年程度、管財事件なら半年~1年程度は破産者になり、破産者は一部の職業に就くことができません。
たとえば、警備員、弁護士、保険の外交員などの職業には、破産者の期間は就くことができません。しかし、免責許可を受けると「復権」を果たしますので、この職業制限がなくなります。
また、平成18年5月に会社法の改正があり、改正後は自己破産をしても株式会社の取締役を辞めなくてもOKになりました。
7.公法上・私法上の資格制限を受ける
破産者の間は、公法上・私法上の資格に制限がかかります。そのため、資格を使う仕事には就くことができなくなります。
- 弁護士
- 公認会計士
- 公証人
- 司法書士
- 税理士
- 弁理士
などの資格は停止されます。
私法上の資格制限
- 後見人
- 後見監督人
- 保佐人
- 遺言執行者
などの資格を制限されます。
免責許可決定が下り、復権を果たすことで公法上・私法上の資格制限がなくなります。
8.保証人・連帯保証人へ与える影響が大きい
自己破産をする方には影響のあるデメリットではありませんが、保証人や連帯保証人が被るデメリットです。非常に厄介な問題です。
保証人(日本では一般的に連帯保証人を指す)・連帯保証人がいる状態で、自己破産をすると保証人・連帯保証人へ債務の請求が行きます。
一般的には、連帯保証人となる方は、配偶者や親族などの親しい間柄になりますので、話し合いをおこない連帯保証人も同時に自己破産することで、このデメリットを回避することができます。
9.7年間は再度、自己破産をすることができない
免責不許可自由の中に、
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
このような文言があります。
つまり、一度、自己破産をして面積許可決定が下りた場合、原則として面積許可決定後7年間は、再度免責許可を受けることができなくなります。
10.自己破産の手続き中、居住の制限を受ける
同時廃止事件の場合、これは関係ありませんが、財産がある状態で自己破産した場合の自己破産手続きである管財事件には関係のあるデメリットです。
管財事件は財産の調査・換価などに半年~1年程度の期間を要します。その間、破産者は裁判所の許可がなければ居住地を離れて転居したり、長期の海外旅行をしたりすることは難しくなります。
これは、財産を隠したり処分したりするのを防ぐための処置です。
11.自己破産の手続き中、身柄を拘束・監視されることがある
管財事件のみのデメリットです。裁判所が認めたときに限り、破産者の身柄を拘束することができます。また、逃げようとしたり、隠し持っている財産を処分したり、破壊してしまわないように監視をつけることを命じることもあります。
12.破産管財人によって郵便物が管理されることがある
管財事件の場合に起きるデメリットになりますが、破産者に宛ての郵便物は、一度破産管財人に配達され、破産管財人は、その郵便物を開封して検閲することができます。
自己破産のメリット
次に、自己破産のメリットを紹介していきます。
- 合法的に借金がなくなる
- 強制執行を止めることができる・されなくなる
- 債権者との調整をする必要がない
- 一定期間借金をすることができなくなる
- 一定の財産を合法的に残すことができる
- 自己破産の弁護士費用は安い
- 生活保護を受ける場合に利用できる
- 自己破産後に得た収入はすべて自分のものにできる
1.合法的に借金がなくなる
自己破産の最大のメリットであり、目的が、合法的になくなるということです。債務の免責などとも呼ばれます。
前述した、免除にならない債務もありますが、その他の債務はすべて免除されますので、経済的に困窮していても更生を図ることができやすくなります。
他の債務整理は3年~5年間をかけて全額、もしくは減額された額の借金を全額返済しなければなりません。
しかも、民事再生(個人再生)のように利用要件に借金の限度額がありません。極端な話、一億円の借金があっても自己破産の免責不許可事由に該当することなく、支払不能状態と裁判所が判断した場合、一億の借金があっても免除となります。
2.強制執行がされなくなる
自己破産をして時点で、債権者は強制執行をすることができなくなります。現在、貸金業者などの取り立ては貸金業法という法律にのっとりおこなわれています。そのため、ヤクザまがいの取り立て人が家に嫌がらせをするということはありません。闇金の場合、貸金業法の外で活動をしていますので、厳しい取り立てをします。
自己破産の申立てをして、破産手続きが開始されると強制執行にて差し押さえられていた給料の差し押さえを停止することができます。免責許可を得てしまえば借金がなくなりますので、貸金業者は差し押さえをする法的根拠がなくなります。ですが、国税局は別です。
裁判所に自己破産の申し立てをしますと、裁判所は各金融機関へ「意見聴取書」を送付します。これは裁判所が金融機関の意見を確認するために送付する書類ですが、この書類には取り立てを止める効果があります。
このように合法的に強制執行の効力を無効化することが可能であり、自己破産の場合は可能になります。
私的な和解交渉である任意整理では強制執行を止めることは不可能です。
3.債権者と調整をする必要がない
あとは、裁判所が粛々と処理を進めてくれます。裁判所が絡み、破産法という法律にのっとった手続きになりますので、多くの債権者は納得して従わざるをえません。
4.一定期間借金をすることができなくなる
前述しましたが、自己破産をした場合、一定期間、指定信用情報機関の個人信用情報機関にブラック登録されます。ちなみに、ブラックリストというリストは存在しません。また、ブラックリストから名前が抹消されることを、「喪明け」と表現する場合があります。
前述しましたが、日本には信用情報機関はCIC、日本信用情報機構(JICC)、そして全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3社があります。
この3社はCRINというシステムにて情報を共有していますので、JICCしか加盟していない貸金業者を利用して自己破産したとしても、3社すべてに自己破産をしたとうい情報がいきわたり共有化されます。
CICは、自己破産の情報収集を止めていますが、5年間はCICに加盟しているクレジットカード会社や貸金業者からはお金を借りることはできません。
CICは自己破産の情報収集はやめていますが、自己破産する前には必ず数か月滞納をしているはずです。その滞納が解消された日から5年間はブラックリストに載ることになります。そのため、任意整理や民事再生(個人再生)を利用した場合、一般的に3年をかけて返済しますので、通算で8年はブラック状態になるわけです。
また、JICCは消費者金融業者が多く加盟している信用情報機関になります。自己破産をすると5年間は金融事故として記録が残り消費者金融機関からお金を借りることができなくなります。
自己破産後、7年間は再度自己破産することができませんので、なるべくは利用しないように気を付けましょう。
そして、KSCですが、これは日本中の銀行が加盟している信用情報機関であり、他の信用情報機関よりも長めにブラック機関が設定されており、10年です。10年間は銀行などのカードローンを利用できないと考えて問題はありません。もちろん、住宅ローンなどの利用は夢のまた夢です。
このブラックリストに載っている期間に借金を慢性的する癖がある人は、お金を借りることができませんので、借金癖や浪費癖を矯正することができるでしょう。つあり、お金を借りることができなければ、借金も浪費もすることができず、悪癖を治すにはうってつけとなります。
前述しましたが、任意整理も3年かけて返済して通算8年は借金をすることができませんので、ブラック状態の期間は「自己破産<任意整理<個人再生」の順番で長くなります。
5.一定の財産を合法的に残すことができる
自己破産をしたら、すべての財産が取り上げられて簀巻きにされて放り出されてしまうわけではありません。もちろん、無一文になることはありません。
破産者の財産は、破産財団となり、換価処分されてしまいます。
これは、破産法第34条に決められています。
(破産財団の範囲)
第三十四条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項(同法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
4 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
5 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
6 第四項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
7 第四項の決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
そして、破産財団に属さない財産は、破産法34条3項1号にて記載されている法定自由財産として手元に残すことが可能です。
自己破産の目的は、破産者の経済的な更生を図るものですから、すべての財産を取り上げてしまっては、経済的な更生をはかることができず、破産法の目的に背いてしまいます。
他にも財産として残せるもの、差し押さえることが「国税徴収法第6款差押禁止財産、第75条関係一般の差押禁止財産」にて禁止されているものも手元に残すことができます。
(一般の差押禁止財産)
第七十五条 次に掲げる財産は、差し押えることができない。
一 滞納者及びその者と生計を一にする配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係にある者を含む。)その他の親族(以下「生計を一にする親族」という。)の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に必要な三月間の食料及び燃料
三 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
四 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
五 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
六 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
七 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物
八 滞納者に必要な系譜、日記及びこれに類する書類
九 滞納者又はその親族が受けた勲章その他名誉の章票
十 滞納者又はその者と生計を一にする親族の学習に必要な書籍及び器具
十一 発明又は著作に係るもので、まだ公表していないもの
十二 滞納者又はその者と生計を一にする親族に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十三 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
2 前項第一号(畳及び建具に係る部分に限る。)及び第十三号の規定は、これらの規定に規定する財産をその建物その他の工作物とともに差し押えるときは、適用しない。
上記のようなものを合法的に手元に残すことができます。
現金についてですが、自己破産をする直前に預金を下ろして現金化した場合、それは無効とされ、現金ではなく預金として扱われる可能性があります。弁護士に確認をしっかりとりましょう。
現金99万円までは、自由財産になるのですが、東京地裁の場合、現金33万円以上を所有していると引継予納金として20万円を裁判所へ納める少額管財事件になります。これは東京地裁だけのおかしな運用なので、注意しましょう。
6.自己破産の弁護士費用は安い
民事再生(個人再生)と比較した場合、自己破産の弁護士費用は安く済みます。
- 自己破産(管財事);41万0400円
- 民事再生(個人再生)(住宅ローン特例あり):51万0400円
東京地裁の場合、弁護士を雇っての自己破産は同時廃止事件か少額管財事件になります。同同時廃止事件の場合、裁判所へ納める予納金は1万円前後です。そして、少額管財事件の場合、裁判所へ納める引継予納金は20万円となります。
一方、民事再生(個人再生)は、東京地裁の場合、弁護士報酬のほかに個人再生委員への報酬の15万円が絶対に必要になります。住宅ローン特例というのは、住宅ローンを守り、その他の借金を減額させる民事再生(個人再生)の特例処置です。自宅を絶対に手放したくないという人が利用するものになります。
7.生活保護を受ける場合に利用できる
生活保護の受給を考えている場合、借金があると生活保護を受けることが難しくなります。生活保護の財源は国民の税金なので、借金返済という私的な理由での使用は困るため、借金をなくしてからでなければ、生活保護を受けることができません。
そのため、すべての借金を免除することのできる自己破産は生活保護を受けて、再起を図るためには非常に有用なものであるといえます。
8.自己破産後に得た収入(新得財産)はすべて自分のもの
自己破産の手続きが終了し、その後、手に入れた財産、つまり新得財産はすべて自分のものになり、債権者も手を出すことができません。たとえば、自己破産後、宝くじで一億円当たったら、すべて自分の財産になるのです。
まとめ
自己破産については、メリットよりもデメリットのほうが多いですが、デメリットを1つ1つみると、期間限定だったり、その他の債務整理方法を利用したときよりも軽く済むケースがあります。
なによりも、自己破産の魅力は借金をチャラ(例外あり)にすることができる点にあります。この魅力を前にしたら、些細なデメリットを気にして無理に任意整理や民事再生(個人再生)を利用するよりは、財産を処分して心機一転の自己破産にかけてしまったほうがいいと思います。
もちろん、自宅をどうしても手放したくない、自己破産をするとつけない職業に就いている場合などの例外はありますが、それらに該当しないのであれば、3年間という長期の返済期間のない自己破産をしてしまったほうが、借金を気にする生活から脱出することができるのでおすすめです。
メリットとデメリットを勘案して、自己破産が自分に利があるのか、それともその他の債務性の方に利があるのかを、専門の弁護士と相談の上で決めましょう。なんとなくで選んでしまうのが一番ダメなパターンです。