任意整理の対象に銀行系カードローンが含まれている場合、注意が必要です。銀行は弁護士からの受任通知が届くと同時に銀行口座が凍結されてしまいます。銀行口座が凍結されてしまうと入金はできますが、銀行口座から出金をすることができなくなります。そして、預金残高がある場合、カードローンの残高と相殺されてしまうでしょう。
今回は任意整理をすると銀行口座が凍結されてしまうのか、凍結はいつになったら解除されるのか紹介していきます。
目次
銀行からの借金やローンを任意整理することができるのか?
近年では、住宅ローン以外にもカードローンを扱っている銀行が増えています。また、総量規制により消費者金融機関では、年収の3分の1までしか借りることができなくなっています。しかし、銀行は総量規制の対象外なので銀行から借り入れる方が増価傾向です。
銀行から借りる場合、消費者金融業者からお金を借りるよりも金利面ではメリットがあります。そのため、安心感がありますのでお金を借りすげて返済をすることができなくなるケースというのも、増加傾向となっています。
では、銀行から借りているお金を任意整理することができるのかといえば、銀行を相手に任意整理をすることができます。
ちなみに、銀行のカードローンを任意整理する場合、任意整理のメリットのひとつである「借金が減る」「払いすぎた分が戻ってくる」過払い金は、そもそも発生しません。銀行系カードローンのメリットは、低金利です。銀行系の金利は利息制限法の範囲内に設定されていますので、グレーゾーン金利のせいで発生していた過払い金は原則発生していません。
任意整理で預金口座が凍結される場合
銀行からカードローンや自動車ローンなどの借入がある場合、任意整理の対象にそのカードローンを含めてしまい、なおかつカードローンを利用している銀行に預金口座を保有している場合、その銀行口座が凍結されてしまう可能性が非常に高いといえます。
- 銀行にローンなどの借金がある
- その借入を任意整理に含める
- その銀行に預金口座がある
この3つの条件を満たしている場合、銀行の預金口座は凍結されます。
任意整理で銀行預金が凍結されるケース
銀行からお金を借りていて、その銀行の別支店に口座を持っている場合
返済に使用していない口座があっても、同一名義人の口座は凍結されます。他の支店の口座もすべて凍結されます。
銀行から自動車ローンを借りている場合
銀行カードローン以外、たとえば、自動車ローンや多目的ローンであっても任意整理の対象に含めているのであれば、銀行預金は凍結されてしまいます。詳しくは各ローンの約款を確認するといいでしょう。任意整理の対象に含めないのであれば、凍結されません。
任意整理は対象にするローンを選ぶことができます。銀行からローンの融資をしてもらっている場合、銀行ローンを任意整理の対象から外すことで口座の凍結を防ぐことができます。
保証会社の巻き込みには注意が必要
銀行を相手に任意整理をおこなう場合、注意をしなければならないのが「保証会社」の存在です。
任意整理の通知を銀行が受け取った場合、保証会社に代位弁済を請求します。代位弁済は保証会社が債権者となります。結果、保証会社が任意整理の相手方となります。(詳しくは後述します)
その結果、三菱東京UFJ銀行のバンククイックを任意整理するときに、アコムからキャッシング(カードローン)をしている場合、アコムのキャッシングも、バンクイックに巻き込まれて任意整理をすることになります。
銀行と保証会社の関係
三菱東京UFJ銀行 | バンクイック | アコム |
三井住友銀行 | 三井住友銀行カードローン | プロミス(SMBC) |
みずほ銀行 | みずほ銀行カードローン | オリエントコーポレーション |
りそな銀行 | りそなプレミアカードローン | オリックス・クレジット |
オリックス銀行 | オリックス銀行カードローン | オリックス・クレジット |
新生銀行 | 新生銀行カードローン | 新生フィナンシャル |
東京スター銀行 | スターカードローン | 新生フィナンシャル |
じぶん銀行 | じぶん銀行カードローン | アコム |
セブン銀行 | セブン銀行カードローン | アコム |
任意整理で銀行預金が凍結されないケース
銀行に預金口座を持っているが、その銀行からお金を借りていない
銀行に預金口座を持っていても、その銀行から直接お金を借りていないのであれば、預金口座を凍結される心配はありせん。
他の銀行の借入を任意整理する
他の銀行の借入を任意整理の対象にすると信用情報機関に載ります。そのため、すべての銀行に任意整理したという事実はばれてしまいますが、それにより任意整理の対象にしていない銀行の銀行口座が凍結されることはありません。
銀行からお金を借りているが、任意整理の対象に含めない
銀行からお金を借りているものの任意整理の対象から除外しているのであれば、預金口座は凍結される心配はありません。
しかし、支払いが滞ってさえいなければ、一般的に期限の利益を喪失することはありません。そのため、直接、銀行への返済が止まらない限り、預金口座の凍結・相殺はされません。
銀行に預金口座を持っているが、その銀行からお金を借りていない。同じグループの消費者金融カード会社でキャッシングをしており、そちらの任意整理をする
同一グループであっても銀行と消費者金融はあくまで別会社です。別会社になりますので、銀行の預金口座は凍結されることはないのです。
また、銀行からお金を借りていないのに、銀行が消費者金融業者の債権と自社の債務、つまり預金口座を相殺することはできません。
銀行の預金口座が凍結されると具体的にどうなってしまうのか?
預金口座が凍結されてしまった場合、預金残高が残っているとカードローン残高と相殺されて強制的に引き落されてしまいます。残高は0円になり、通帳には「代位弁済に伴う相殺」と記帳されます。
銀行口座が凍結されてしまうと、凍結が解除されるまでの間、その預金口座を利用することができなくなります。具体的には、お金を引き出すことができなくなります。銀行ATMなどでキャッシュカードを挿入しても、「窓口までお越しください」などと表示されます。
その一方で、凍結中でも口座への入金はできるケースが多くなります。そのため、事前に振り込み口座を変更しておかないと、凍結中の口座に勤務先から給与が振り込まれてしまう可能性がありますので注意しましょう。
保証会社が代位弁済するまで預金口座は凍結される
銀行からの借入には保証会社がついています。もし債務者が返済することができなくなった場合、保証会社がその債務を代わりに返済します。これが「代位弁済」という制度です。
代位弁済とは、ローン契約(金銭消費貸借契約)で債務者が返済できなくなった場合、代わりに保証会社または連帯保証人が返済をすることをいいます。代位弁済をした保証会社は、肩代わりして支払った分のお金を債務者本人に対して請求できます。これを求償権といいます。そのため、元の債権者は、以降は保証会社に対して残額の返済義務を負います。
たとえばですが、銀行カードローンで120万円の借金をして、その借金を任意整理するとします。
弁護士が送付する受任通知が銀行に届くと、銀行は保証会社に対して120万円を請求します。銀行はカードローンのような少額の任意整理交渉には、いちいち応じません。後のことは、保証会社へ丸投げをするのです。
保証会社が120万円を銀行に代位弁済した後は、債務者は銀行ではなく、保証会社に対して120万円の返済義務を負うことになります。そして、任意整理の和解交渉も保証会社とすることになります。
これが、代位弁済の仕組みになります。
代位弁済にかかる期間は通常1ヶ月~2ヶ月
銀行が預金口座を凍結するのは、一般的には保証会社から代位弁済を受けるまでの1ヶ月~2ヶ月の間だけです。
銀行は最初に一度、受任通知を受け取った時点で口座に残っている残高をすべて引き下ろして相殺します。たとえばですが、カードローン残高が120万円で口座残高が20万円であれば20万円を引き下ろしてカードローン残高と、とりあえず相殺をします。その後、120万円から20万円を引いた額である100万円を請求します。
銀行が相殺を先にしなければ、保証会社に請求する額が決まりません。そして、保証会社からの支払を受けるまでの間、銀行を口座は凍結しておくわけです。
保証会社の代位弁済が終わった後は、銀行はもう債務の残額を返してもらったことになりますので、口座の凍結は解除されます。凍結が解除された後は入金も出金も元通りにできるようになります。
特にその銀行口座にこだわる理由がないのであれば、新しく口座を作ってしまった方が早いでしょう。任意整理中であっても、どの銀行でも新規口座を作ることはできます。
銀行口座が凍結される対策として事前にやっておくこと
銀行カードローンをはじめとして、その他の銀行からの借入を任意整理する場合は、あらかじめ下記のことしておきましょう。受任通知が銀行に届くまでにやっておけば問題ありません。
- 任意整理の対象とする銀行の預金口座は、すべての残高を引き出して別の口座へ移しておく
- 給与振り込みさきの指定口座となっている場合、職場に頼んで振込口座を変更してもらう
- 電気代やガス代などの公共料金の支払いが口座引き落としになっている場合、コンビニ払いなどに変更をしておく
- クレジットカードの引き落としの対象となっている口座は残高0円にしておく
クレジットカードの自動引き落としが続いてしまうと、その間は債務額が確定できないので、弁護士や司法書士が任意整理の交渉を進められなくなります。
すでに銀行口座が凍結されてしまった場合、その後の給与はどうなるのか
事前に銀行の預金残高を0円にするのを忘れていた、会社の都合で振込先の銀行口座はどうしても変更できないという場合はどのようにすればいいのでしょうか。
まず、事前に銀行の預金口座を0円にするのを忘れていた場合は、預金口座に残っていた預金は諦めるしかありません。受任通知が銀行へ届いた時点で相殺されてしまい、残高は持ってきません。
一方で、受任通知の送付後、つまり銀行口座が凍結された後には、預金や売掛け員が入金された場合、このお金は戻ってくる可能性があります。
受任通知が届いた後に振り込まれた給与は相殺されない
受任通知が届いた時点で口座に20万円の残高が残っている場合、この20万円は相殺で引き落とされてしまい、戻ってはきません。
しかし、受任通知を送った2週間後に、勤務先から給与として30万円が新しく入金された場合、給与の30万円は口座凍結中には引き落とすことができません。凍結が解除されたば引き出すことができる可能性があります。
なぜなら、銀行は一般的に受任通知の送付後に振り込まれたお金を相殺の対象とすることはしません。
その理由として、自己破産の場合、破産法71条2項により受任通知が届いた後に振り込まれた預金を相殺してはいけないと法律で決まっています。
このような破産法との兼ね合いのなどの事情から、一般的に預金口座が凍結されても凍結中に入金された給与が、相殺されることはありません。しかし、凍結中はカードで引き出すことができません。そのため、凍結が解除されるのを待つしかありません。代位弁済までに時間がかかった場合、1ヶ月~2ヶ月は給与を受けとることができません。
そのため、任意整理をする前に給与の振込先口座を変更するのが理想的です。
銀行窓口で給与部分だけ払い戻しをしてもらえる場合もある
弁護士が銀行窓口で交渉すれば凍結中の貯金口座に給与が振り込まれた場合でも、給与部分だけは窓口で払い戻しをしてもらえる可能性があります。
給与が振り込まれないと、多重債務者の方は生活することができません。また、任意整理の費用を支払うこともできないでしょう。弁護士も「受任通知後に振り込まれる給与で、任意整理の報酬を支払ってもらう」と考えている方も多いので、給与が入って来なければ、ある程度は、面倒くさがらずに銀行との交渉もおこなってくれる可能性があります。
まとめ
銀行を相手に任意整理をすることは可能です。しかし、その時に注意をしなければならないのが「預金口座の凍結」です。預金口座が凍結されてしまいますと、口座に入っているお金は強制的に引き出されて、借金の残高と相殺をされてしまします。
そのため、任意整理をする前には、銀行の預金口座からお金を引き出しておかなければなりません。
預金口座が凍結される期間ですが、これは銀行により異なりますが、2ヶ月~3ヶ月程度です。この間、銀行は保証会社から代位弁済をしてもらい、代位弁済後には口座の凍結は解除されます。
任意整理をした事実は、信用情報機関を使い他の銀行とも共有されますが、任意整理の相手にした銀行以外の銀行は預金口座が凍結することはありません。また、預金口座が凍結中であっても他の銀行口座を作ることは不可能ではありません。
また、銀行の保証会社は消費者金融業者が多く、銀行と系列の消費者金融業者の両方から借金をしている場合、銀行だけ任意整理をするということはできず、強制的に消費者金融も任意整理の対象になります。