任意整理は、債務整理の中ではもっとも利用しやすいといわれている債務整理の方法になります。そのため、任意整理=債務整理といわれるほど一般的なものです。利用の敷居が低いのですが、では、任意整理のメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、任意整理のメリットについて解説をします。
目次
- 1 任意整理とは?
- 2 任意整理のメリット
- 2.1 1.利息制限法による再計算により借金の元本を減額させることができる可能性がある
- 2.2 2.官報に名前や住所などが載らない
- 2.3 3.自動車や住宅のローンを債務整理の対象から外すことができる
- 2.4 4.過払い金が発生していれば、お金が返還される
- 2.5 5.特定の貸金業者だけを選んで任意整理の交渉ができる
- 2.6 6.受任通知を送付することにより借金の取立、催告をストップさせることができる
- 2.7 7.将来利息や遅延損害金の免除される可能性がある
- 2.8 8.返済期間の見直しにより毎月の返済額を減額でき
- 2.9 9.専門家への依頼費用が比較的安い
- 2.10 10.裁判所を利用しないので、裁判所に出頭や予納金も必要ない
- 2.11 11.周囲の人に任意整理をしたことがばれるリスクが極めて低い
- 3 まとめ
任意整理とは?
任意整理とはどのようなものかというと、債務整理の手続きの1つです。
債務整理は任意整理の他に、特定調停、民事再生(個人再生)、自己破産があります。これらの債務整理の中で、任意整理はもっとも敷居が低い債務整理の方法といえるでしょう。
特定調停は任意整理と内容は似ているのですが、特定調停は任意整理と異なり、簡易裁判所を利用して手続きを進めていくものです。特定調停は個人で申立をすることができるのですが、内容は任意整理とほぼ似ており、任意整理よりも特定調停を利用するメリットは少ないので、特定調停の利用者はあまり多くありません。
特定調停を利用するくらいならば、弁護士を雇って任意整理をしてしまった方が債務整理の成功確率は高くなります。
民事再生(個人再生)と自己破産は地方裁判所へ申立てることにより実行される債務整理です。民事再生法と破産法という法律にのっとり進められる債務整理の方法になりますので、個人的に手続きを進めるのは、難しいでしょう。また、地方裁判所へ申立てることにより手続きを進めますので弁護士でしか代理人を務めることができません。
- 任意整理
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
この中から、どれがいいのか債務整理の専門家である弁護士、もしくは司法書士と相談をしてベストな債務整理方法を選ぶというのが一般的です。
任意整理の債務整理効果
- 利息のカット
- 遅延損害金の免除
- 返済期間の延長
この3つです。
利息のカットというのは、将来発生する利息である15%~18%の利息カットのことをいいます。つまり、元本のみの返済を続けるということです。利息をカットするだけでも借金の減額効果というのは大きくなります。
そして、遅延損害金の免除ですが、滞納しているときに発生した遅延損害金の免除を任意整理にておこなうことができるでしょう。
最後に返済期間の延長です。返済期間の延長ですが、任意整理の場合は原則として3年間の返済期間のリスケジュールに応じてもらえる可能性があります。
ただし、任意整理というのは裁判所を介さずにおこなう、私的な和解交渉ですから債権者が任意整理に応じなければ、利息のカット、遅延損害金の免除、返済期間の延長をしてもらえることはできません。
しかし、過去に利息制限法の上限20%を超える金利で返済している場合、その超過分の支払利息額で借金を帳消しにすることができます。グレーゾーン金利が存在していた2010年以前から長期にわたり借金をしている場合、利息引き直し計算を利用して借金を減額することができますが、現在、グレーゾーン金利は廃止されていますので引き直し計算を利用する元本の減額は難しいといえます。
弁護士と司法書士の違い
任意整理は、弁護士か司法書士へ依頼をして進めるのが一般的な方法です。
また、司法書士は簡易裁判所までは代理人を務めることができますが、それ以上の地方裁判所や高等裁判に提訴されてしまった場合、司法書士は代理権を行使することができないので、別に弁護士を雇う必要があります。そのため、司法書士と弁護士に二重に費用を支払うことになりかねません。
また、民事再生(個人再生)や自己破産の代理人も司法書士では務めることができないので、債権者が強く出てくることがあります。
これらのことから、任意整理は弁護士へ依頼をしてしまった方が多くの金銭を回収ができる可能性が高くなります。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは下記のものが挙げられます。
- 利息制限法による再計算により借金の元本を減額させることができる可能性がある
- 官報に名前や住所などが載らない
- 自動車や住宅のローンを債務整理の対象から外すことができる
- 過払い金が発生していれば、お金が返還される
- 特定の債権者だけを選んで任意整理の交渉ができる
- 受任通知を送付することにより借金の取立、催告をストップさせることができる
- 将来利息や遅延損害金の免除される可能性がある
- 返済期間の見直しにより毎月の返済額を減額でき
- 専門家への依頼費用が比較的安い
- 裁判所を利用しないので、裁判所に出頭や予納金も必要ない
- 周囲の人に任意整理をしたことがばれるリスクが極めて低い
1.利息制限法による再計算により借金の元本を減額させることができる可能性がある
過去に払い過ぎた利息分を取引開始時点からさかのぼり、計算をして借金を減額することができます。2010年の貸金業法が改正されるまでは、利息制限法と出資法の2つの金利がありました。
貸金業法が改正される前は、違法な金利を支払ってしまっていた人は、不当利得返還請求権に基づき、払いすぎてしまった分の利息の返還請求をおこなうことができます。そして、払い過ぎた利息分を適正な金利水準で引き直して、現在の借金の残高をもう一度計算しなおすことを「利息引き直し計算」です。
ただし、2010年より前からずっと継続して同じ金融機関との借入を繰り返ししている人が対象であり、グレーゾーン金利が廃止されている2017年現在では、実際に利息引き直し計算をして元本を減額できるケースは減っています。2010年以前からずっと借金をしている人が対象です。
2.官報に名前や住所などが載らない
任意整理の場合、裁判所を利用しませんので官報に名前や住所は載りません。
官報とは国が発行している広報紙であり、民事再生(個人再生)や自己破産などをした場合、官報に名前や住所が載ります。
3.自動車や住宅のローンを債務整理の対象から外すことができる
自動車ローンや住所ローンを債務整理の対象にしてしまうと、自動車や住宅は没収されて売却されてしまいます。
結果として、自動車や住宅を任意整理することで守ることができます。
4.過払い金が発生していれば、お金が返還される
前述したグレーゾーン金利の引き直し計算をし、過払い金返還請求をおこなった際に、借金の元本より過払い金の方が多い場合、お金が返還されます。
これが過払い金です。
5.特定の貸金業者だけを選んで任意整理の交渉ができる
前述したように、任意整理は特定の債権者を対象にして債権整理をすることができます。
そのため、特定の貸金業者だけを選んで任意整理の交渉をすることができるのです。
任意整理は、お金を借りた職場や友人知人を債務整理の対象からはずすことができます。
6.受任通知を送付することにより借金の取立、催告をストップさせることができる
任意整理をする上で一番のメリットとしては、弁護士や司法書士へ任意整理を依頼すると、債権者宛に受任通知を送ります。
受任通知は弁護士や司法書士が債務整理として介入するので。連絡をするのであれば、まずは弁護士や司法書士を通してくださいということを通知するものです。
受任通知を受け取った債権者は借金の催促の電話、郵便物による請求をすることができなくなります。これは貸金業法で禁止されています。
任意整理を前提で受任通知を送付して、順番に債権者と交渉をして話し合いをし、結果として、任意整理をすることが無理という話になれば、あらためて民事再生(個人再生)や自己破産などの手続きを検討することもできます。
7.将来利息や遅延損害金の免除される可能性がある
任意整理のメリットは、将来利息のカットです。以前より、金利が低くなったとはい、現在でも消費者金融業者など金利は年利15%~20%とかなり高額です。
利息込みでの定額リボである元利定額リボの場合、返済をしても月々の返済額少ないため、元本があまり減っていないケースがあります。
将来利息カットをすることができれば、以降元本のみの返済となりますので、支払総額という観点からみると、返済負担を大きく減らすことができるでしょう。
また、借入先が複数あると将来利息のカットは有効な債務整理となります。
8.返済期間の見直しにより毎月の返済額を減額でき
任意整理しても借金の元本の減額というのはありません。そのため、100万円を借りたら、100万円を返済しなければ完済とならないのです。任意整理はあくまでも、任意の和解交渉であり、債権者が元本の減額まで譲歩することは考えられません。
3年程度のリスケジュールをすることで、毎月の返済額を減らすことができます。
返済期間が延びることになりますが、やり手の弁護士や司法書士に依頼をすることで、将来利息のカットを合わせて交渉するのが普通です。そのため、将来利息カット、遅延損害金免除などとあわせて交渉し、新たに和解契約交渉を結びなおすので、支払負担を最小限に抑えることができ、月々の返済額だけを減らすことが可能です。
9.専門家への依頼費用が比較的安い
- 着手金:43,200円
- 報酬金:10,800円+その経済的利益に対して10.8%を乗じた金額
原則、4回まで分割払いが可能です。商工ローン、闇金、不動産担保ローンや裁判を起こされている場合、別途料金となる場合があります。
10.裁判所を利用しないので、裁判所に出頭や予納金も必要ない
裁判所への出頭は平日におこなわれるので、仕事がある方の場合、職場を休む必要が出てきます。また、裁判所に行く、裁判官との面談があるというのは、心理的なハードルが高くなります。
また、民事再生(個人再生)や自己破産をする場合、裁判所へ納める予納金が必要になります。たとえば、自己破産の場合手続きにより50万円を現金前払いで納める必要です。
裁判所を利用しないので、裁判所へ提出する書類を集める必要もありません。
裁判所を利用する場合、提出する必要が多くなります。そのため、家族にばれる可能性が高くなります。
11.周囲の人に任意整理をしたことがばれるリスクが極めて低い
裁判所や債権者からの郵送物が届くこともありません。弁護士や司法書士と事前に連絡方法を打ち合わせておくことで、任意整理をしたことが家族や周囲の人にばれる可能性はほとんどありません。
まとめ
任意整理のメリットについては、
- 利息制限法による再計算により借金の元本を減額させることができる可能性がある
- 官報に名前や住所などが載らない
- 自動車や住宅のローンを債務整理の対象から外すことができる
- 過払い金が発生していれば、お金が返還される
- 特定の貸金業者だけを選んで任意整理の交渉ができる
- 受任通知を送付することにより借金の取立、催告をストップさせることができる
- 将来利息や遅延損害金の免除される可能性がある
- 返済期間の見直しにより毎月の返済額を減額でき
- 専門家への依頼費用が比較的安い
- 裁判所を利用しないので、裁判所に出頭や予納金も必要ない
- 周囲の人に任意整理をしたことがばれるリスクが極めて低い
これらがあります。
特に官報に名前が載らない、特定の貸金業者を選んで任意整理をすることができる、裁判所を利用しないというのは、任意整理のみにあるメリットです。