【厳選】任意整理のデメリット8選を徹底解説

債務整理はさまざまな方法がありますが、その中でもっとも利用されているのが、任意整理です。任意整理は他の債務整理の方法と比較をするとデメリットが多くありません。そのため、生活の再建という面から考えるのであれば、利用しやすいという特徴があります。

任意整理はデメリットが少ないと前述しましたが、デメリットがないわけではありません。債務整理である以上、一定のデメリットが存在することを忘れてはいけません。

今回は、任意整理のデメリットについて紹介をします。

債務整理について

債務整理には、

  • 任意整理
  • 特定調停
  • 民事再生(個人再生)
  • 自己破産

この4つの種類があります。

この中で、任意整理は債務整理=任意整理と考えられるほど、もっとも利用される債務整理の1つであるといえます。

そして、特定調停ですが、弁護士や司法書士を利用することなく債務整理をおこなう方が利用する債務整理となります。債務整理の内容としては任意整理とさほど代わりはありません。

しかしながら、特定調停を利用すると過払い金返還請求をするためには別の手続きをとらなければなりません。また、作成した調停調書どおりに返済をしなければ容易に強制執行をされてしまうというデメリットがあります。つまり、債権者が差押えなどを簡単できてしまうわけです。

また、簡易裁判所へ申立てておこなうのですが、調停委員が債務整理の専門家ではないというケースが多くなります。そのため、債権者に有利な条件で調停調書を作られてしまう可能性があるわけです。そのため、特定調停については現在、あまり利用されていない、もしくは任意整理で話し合いが難航した場合に利用されるということが多くなります。

そして、民事再生(個人再生)ですが、地方裁判所へ申立てて行うことで実行される債務整理です。任意整理よりも借金の減額効果が高く、自己破産よりも借金の減額効果が少ない債務整理です。

任意整理では、借金の返済は難しいけれども、自己破産を選択したくないという場合に利用するのが理想的な債務整理の方法です。特に、住宅ローンを抱えていて、住宅ローンについての特別な条項が設けられています。住宅ローンの返済が原因で生活が困窮している場合に利用するのが向いている債務整理です。

利用することで借金を原則5分の1まで減額することができます。減額した借金を3年間かけて返済をするというのが民事再生(個人再生)です。

そして、債務整理の奥の手が自己破産です。裁判所へ申立てることにより、非免責債務以外の債務をすべて帳消しにすることが可能な債務整理の方法になります。

ただし、借金の返済をすることが不可能であるということが裁判所にて判断されない限り、自己破産を利用することはできません。

また、自己破産を利用した場合、一般的に20万円以上の財産はすべて処分しなければなりません。差押禁止財産などを除き、20万円以上の価値のある自動車や預貯金、保険の返戻金などはすべて換価処分され、債権者に配当されます。

つまり、自己破産は財産を処分する代わりに、借金が免除されるのです。一時的に職業制限を受けるなどの他の債務整理の方法にはないデメリットがあります。しかし、選挙権などの公民権が停止されることはありません。

任意整理について

任意整理は、債務整理の顔といっていいほど、債務整理の中ではもっとも利用されるものです。裁判所を利用することなく、債権者との話し合いにより任意で債務を整理します。

任意整理は債務整理の中で唯一、裁判所を利用することなく債務整理をするので、裁判所へ納める予納金や必要書類などを集める必要がありません。弁護士や司法書士へ丸投げをしてしまえば、あとは弁護士や司法書士が勝手に債務整理の話し合いをおこなってくれます。そのため、債務整理の中ではもっとも楽な方法です

また、民事再生(個人再生)や自己破産とは異なり、財産を守ることが可能です。民事再生(個人再生)や自己破産は、すべての債権者を対象にして債務整理をおこなうのに対して、任意整理は特定の債権者のみを対象に債務整理をすることができます。

たとえばですが、自動車ローンや住宅ローンがある場合、任意整理の対象から自動車ローンや住宅ローンを外すことが可能です。

もちろん、自己破産のように一定額以上の財産を持っていると必ず没収されるということもありません。

そして、任意整理は官報に掲載されません。

官報とは、国が毎日発行する新聞のようなもので、法律・政令等の制定・改定や破産・相続などの裁判内容が掲載されます。官報については、地方の官報販売所、政府官公物サービスセンター、市区町村の図書館などで閲覧することができます。インターネットでも閲覧することも可能であり、誰でも見ることができます。

民事再生(個人再生)や自己破産を利用した場合、裁判所の決定内容が掲載されます。そのため、民事再生(個人再生)や自己破産を利用した人の名前や住所などが官報に掲載されるでしょう。

任意整理は裁判所を利用しない債権者と債務者の私的な和解交渉です。そのため、任意整理をした場合、官報へは名前は載りません。

ただ、官報に名前が載ったとしても、官報は簡単に入手することができるものではありません。つまり、官報に名前が載ったとしても、本格的に調べなければ民事再生(個人再生)や自己破産をした記録を探しだすのは一般人には不可能なので、官報に名前が載ったとしてもそこまで問題にはなりません。

任意整理のデメリットについて

任意整理のメリットについては、別の記事で紹介をしました。

では、任意整理のデメリットについてですが、

  1. 借金の圧縮率はあまり高くない
  2. 任意整理に応じてもらえない場合がある
  3. 個人信用情報機関に登録される
  4. 手続き後に必ず返済が必要
  5. 利用するためには収入が必要
  6. 強制執行を止めることができない
  7. 原則3年以内に完済しなければならない
  8. 銀行カードローンの場合、預金口座の残高と相殺される

1.借金の圧縮率はあまり高くない

まず、民事再生(個人再生)と自己破産の場合は、借金の「元本」を減額もしくは免除することができます。

民事再生(個人再生)の場合は、借金の元本を原則5分の1前後、減額することができます。そして、自己破産は非免責債権を除き借金を全額免除することが可能です。

では、任意整理の場合はといいますと、「元本」の減額はありません。

2010年以前から継続して長期にわたり借入をおこなっており、過払い金が発生している場合、過払い金をすでに返済したものとして元本の減額(みなし弁済)ができました。しかし、2017年現在では、みなし弁済を利用しての元本の減額は難しくなっています。

2010年以前は、たとえば50万円を借りた場合、利息制限法の上限利息は18%であり、出資法の上限利息は29.2%という二重の基準がありました。いわゆるグレーゾーン金利です。

18%以上の金利で貸すのは利息制限法違反ではありますが罰則はなく、多くの消費者金融業者は利息制限法ではなく出資法にてお金を貸付していました。そのため、任意整理をする際には引き直し計算をおこない、過払い金が発生しているのであれば、元本の返済がなされたものとして元本の減額をおこなうことができます。

しかし、任意整理で元本の減額をするためには、利息引き直し計算をして過払い金が発生している必要があり、借金の元本の減額は不可能です。つまり、任意整理をしたからといって借金が大幅に減るということは原則ないのです。

つまり、任意整理でできるのは、将来利息のカット、返済期間のリスケジューリング(貸付条件変更)しかありません。

利息の免除、リスケジューリング(貸付条件変更)がなされたとしても、3年~5年かけて完済することができないのであれば、任意整理をしたとしても借金を完済することができませんので、任意整理を諦めて、民事再生(個人再生)や自己破産の選択をするのが理想的です。

2.任意整理に応じてもらえない場合がある

任意整理は、あくまでも私的な和解交渉になります。

裁判所を介して民事再生法、破産法にのっとりおこなわれる債務整理ではありません。そのため、債権者は減額や交渉に応じても応じなくても自由なのです。それゆえに、希望する毎月の返済額や将来利息のカットでの和解交渉が成立しないこともあります。

ただ、債権者にとってメリットのない任意整理に応じる理由は複数あります。

  • 債務者が自己破産をしてしまった場合、1円も借金を回収することができなくなるので、3年~5年間のリスケジューリング(貸付条件変更)に応じたとしても損はありません。
  • 実際に債務者にお金がない以上、どうしようもない
  • 裁判をおこして差押えをしても、借金を回収する見込みが薄く、費用倒れになる可能性が高い
  • 債務者が毎月返済できる金額の上限が決まっている以上、早々に和解をしないと自社の取り分は減ってしまう
これらのことから債権者は任意整理に応じます。

近年では、消費者金融業者も過払い金返還請求ブームの煽りを受けて、業績悪化により将来利息のカットに応じない消費者金融業者も多く存在します。以前のように消費者金融業者も資金面の体力がなくなっているので、任意整理の交渉に応じない消費者金融業者もあります。

また、任意整理に応じないので、民事再生(個人再生)や自己破産をしてくださいという業者も存在します。

任意整理には、応じる法的義務がありませんので、債権者が対応しないケースは存在するのは仕方ありません。

3.個人信用情報機関に登録される

個人信用情報機関と呼ばれる機関が、

  • CIC
  • JICC
  • KSC

この3社があります。

個人信用情報機関は、消費者金融業者や銀行、信販会社、リース会社などの多くの貸金業者が加盟する、顧客の信用情報データベースです。個人信用情報機関に「任意整理をした」という情報が登録されると、5年間は新規に借入やローン、クレジットカードの作成が困難になります。
登録される期間については、完済してから5年間であり、返済中の期間もあわせ8年間は借入やローン、クレジットカードの作成が困難になると考えて問題はありません。

この状態をブラックリストに載ると表現します。

このブラック状態が日常生活の中でもっとも大きなデメリットになるでしょう。

個人信用情報は、加盟しているクレジットカード会社や消費者金融業者、銀行などの金融機関しか見ることはできません。見るためには、本人の同意が必要です。そのため、一般人や会社の人が個人信用情報を見るということはまずありません。当然ですが、個人信用情報が原因で任意整理をしていることが家族にばれる可能性はありませんし、働いている会社にばれるということもありません。
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ブラックリストに登録されるというのは、任意整理のみならずすべての債務整理をすることで登録される共通のデメリットです。そのため、債務整理をするのであれば、ブラックリストに登録されるということを事前に覚悟しなければならないでしょう。

また、ブラックリストに登録されるのは、任意整理をした本人に限られますので、自身がブラックリストに登録されたからといって、家族も同様にブラックリストには登録されません。そのため、家族はローンを組んだり借入をしたり、クレジットカードを作成することは問題なくおこなえます。

4.手続き後に必ず返済が必要

自己破産の場合、非免責債権以外の債務はすべて免除されますが、任意整理の場合、3年~5年のリスケジューリング(貸付条件変更)や将来利息のカットはあるものの、必ず借金を完済しなければなりません。

民事再生(個人再生)を利用した場合は、元本が原則5分の1減額されます。しかし、任意整理の場合は元本の減額はなく、元本を3年~5年かけて必ず完済しなければなりません。

5.利用するためには収入が必要

任意整理は、3年~5年をかけて必ず返済をしなければなりません。そのため、安定した収入がなければ任意整理をすることはできません。

3年間安定した収入を得ることができない、たとえば、2年後に定年退職を迎えてしまうという場合、任意整理を選択するのは少しリスクが高くなります。再雇用されたとしても収入は減少するわけですから、生活が再び苦しくなる可能性が高くなるわけです。

5年の60回払いになると、さらに完済することができるのかわからなくなります。そのため、収入の減額が予想できるのであれば、任意整理ではなく元本の減額ができる民事再生(個人再生)の利用も視野にいれて債務整理の計画を立てるべきです。

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このあたりにつきましては、債務整理のプロである弁護士や司法書士と相談しましょう。どの債務整理が現実的であり、経済的な破綻が起きないかなど十分に議論をした方がいいでしょう。

6.強制執行を止めることができない

現時点で長期間滞納をしていて、債権者から支払督促や通常訴訟などによる法的措置をとられている場合、任意整理をすることはできません。

裁判所へ訴訟手続きをしているので、債権者にはいまさら裁判所を介さず任意整理をして和解するメリットはありません。裁判上の和解など法廷で和解をしてしまった方が債権者からしてみればメリットは多くなります。

また、裁判手続きが進行して、差押えや強制執行にまで事態が発展していると任意整理手続きにより、差押えや強制執行を中断する法的決定力はありません。そのため、すでに給与差押えなどの強制執行を受けている場合、原則として任意整理では手遅れです。例外はあり、必ずしも不可能ではありませんが現実問題難しいでしょう。

ここまで事態が進行している場合、民事再生法や破産法により強制執行を止めることができる、民事再生(個人再生)や自己破産を利用するといいでしょう。民事再生(個人再生)や自己破産は、裁判所へ申立てをおこない、開始決定と同時に給与差押えなどの強制執行手続きを法的に中断させることができます。また、民事再生(個人再生)や自己破産手続が完了すれば、強制執行の手続きを失効させることもできるでしょう。

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つまり、すでに差押えを食らってしまっているのであれば、民事再生(個人再生)や自己破産の手続きをとるのが現実的な方法です。

7.原則3年以内に完済しなければならない

任意整理は、リスケジューリング(貸付条件変更)をしたとしても、原則として3年36回払い以上のリスケジューリングは難しいとされています。中には5年間の60回払いも認めてくれるケースもありますが、非常に稀です。

そのため、任意整理は3年間36回払いというのが原則と考えるべきです。3年間で完済でき、かつ生活が破たんしないようであれば任意整理を、完済が難しい、もしくは生活が破たんする可能性があるようならその他の債務整理を選ぶべきです。

8.銀行カードローンの場合、預金口座の残高と相殺される

銀行カードローンを利用している場合、弁護士に依頼をして受任通知を送付すると、その時点で銀行口座が凍結されてしまいます。つまり、使用することができなくなります。

そして、預金口座の残高と借りている分が相殺されます。

そのため、受任通知を送付する前に銀行口座からお金を引き出し、さらにその口座が給与入金口座であるのならば、あらかじめ別の口座へ給与振込口座を変えておかねばなりません。

まとめ

任意整理のデメリットは、

  1. 借金の圧縮率はあまり高くない
  2. 任意整理に応じてもらえない場合がある
  3. 個人信用情報機関に登録される
  4. 手続き後に必ず返済が必要
  5. 利用するためには収入が必要
  6. 強制執行を止めることができない
  7. 原則3年以内に完済しなければならない
  8. 銀行カードローンの場合、預金口座の残高と相殺される

このようなものがあります。

特に問題のデメリットは、「借金の圧縮率はあまり高くない」でしょうか。原則、任意整理をしたとしても元金の減額というのはありません。また、3年で完済できるというのも任意整理を利用する上では重要な要件になります。3年で完済することができないのであれば、任意整理ではなく別の債務整理を検討するべきでしょう。

また、他の債務整理とは異なり、あくまでの私的な話し合いにより和解を目指すものになります。そのため、債権者が訴訟や強制執行などの法的な手続きを進めている場合、任意整理では対応することは難しいといえます。

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