任意整理とは、どのような債務整理の方法なのか?

man
債務整理と任意整理って違うのですか?
concierge
債務整理は任意整理の1つの種類です。
man
では、任意整理とはなにをするのでしょうか?
concierge
今回は債務整理の1つである任意整理とはどのような手続きなのかを紹介します。

任意整理とは?

任意整理とは日弁連「債務整理事件処理の規律を定める規定」第2条第3号のことをいい、「債権者が債務者に対して有するとみられる債権について、弁済の額、方法などについて裁判外で債権者と交渉をして処理する」ことです。

つまり、債権者と私的に和解交渉をして、和解をするものであり、弁護士や司法書士が債務者の代理人となり、債務者の家計を破綻させない範囲で返済計画を認めてもらうよう、債権者と交渉をします。裁判所を介さないでおこないますので、任意整理と呼ばれます。

任意整理は債務整理の1つではありますが、債務整理=任意整理と言われるほど、債務整理の中では一般的な方法です。敷居も低く利用する人が多くなります。

また、その他の債務整理とは異なり、すべての債権者を対象に債務整理をするのではなく、任意の債権者を相手にして債務整理をすることができるのが任意整理のメリットです。

たとえば、住宅ローン、自動車のローン、消費者金融業者からの借金があるのであれば、住宅ローン、自動車ローンを債務整理から外して、消費者金融業者のみと債務整理をおこなうことができます。

個人的におこなうことも可能ですが、弁護士や司法書士に依頼をして実行をしていくのが一般的です。

問題として司法書士の場合、借金が140万円以上あると、その案件を取り扱うことができなくなります。これは最高裁にて決められた判決です。

司法書士は簡易裁判所までは代理人を務めることが可能ですが、控訴されて地方裁判所になったら司法書士は代理人を務めることができなくなり、債務者自身が法廷に立つ必要が出てきます。

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任意整理をするのであれば、弁護士に依頼をした方がいいでしょう。

任意整理の話し合いがうまくいくと、債権者との間で和解契約を締結します。

それに基づいて和解書もしくは合意書を債権者と取り交わします。合意書を作成することにより、後日、債権者との間で、やっぱあの合意はなし、そんな話は言っていないなどの、不毛な紛争の蒸し返しを防ぐことができます。そのため、和解書は必ずおこなう必要があります。

債務整理事件処理の規律を定める規定

弁護士が個別に債務者と直接面談し、債務の内容・資産等の状況・不動産処理の方針・債務整理方針の希望などを聴取しなければなりません。

そして、債務整理の方針・見通し、ブラックリストへの登録などの不利益事項、弁護士報酬・費用、法テラスの民事法律扶助の利用の仕方などについて、説明をしなければなりません。

問題となるのが、弁護士の報酬です。これはできる限り詳しく説明をして、契約の段階においても契約書に誤解が生じないように記載するよう努力をしなければならないとされています。

また、任意整理については報酬についても規律があります。任意整理の着手金は適正なものでなければなりません。債権者が増えた場合、基本的に追加着手金などを請求し、引き直し計算の手数料などの名目で手数料を請求することは禁止されています。

さらに、任意整理は着手金を受領した場合、その債権者は過払い金返還請求するにしても、弁護士は任意整理の着手金とは別途、過払い金返還請求の着手金を受領してはならないとされています。

任意整理の解決報酬金は、債務整理事件処理の規律を定める規定にて、債権者1社につき5万円が限度とされています。ただし、商工ローンによる担保付債権の場合、それ以外の場合については1社につき2万円が上限とされています。

また、減額報酬金についても、債務整理事件処理の規律を定める規定により、減額成功額の10%相当が上限となっています。

過払い金回収の報酬も、債務整理事件処理の規律を定める規定では訴訟によらず回収した場合には回収金額の20%相当額、そして、訴訟により回収した場合は25%相当額が上限とされています。

任意整理での債務整理について

任意整理というのは、債権者という相手のいる交渉になります。そのため、債務者が納得いく、債務者の希望する返済条件になるケースは少なくなります。

一般的に任意整理でできるものとしては、3年間のリスケジュールです。つまり、36回の分割払いを認めてもらうことです。

債権者によっては5年(60回払い)のリスケジュールも認めてくれることがあります。しかしながら、消費者金融業者などの貸金業者の場合は、36回前後での分割払いとなります。

36回以上の分割払いにして、借金を完済することができないのであれば、家計がかなり困窮する可能性が非常に高くなります。つまり、無理をして返済しなければならなくなるので、任意整理ではなく別の方法での債務整理を検討するのがいいでしょう。

任意整理以外の債務整理として、個人再生や自己破産があり、この2種類の債務整理は借金の元本を減額、もしくは借金自体を帳消しにすることができます。

また、利息のカットも任意整理の交渉ではよくおこなわれます。

利息にはさまざまあり、まず「経過利息」ですが、債務整理開始による返済の停止後から任意整理により和解が成立するまでの間に発生した利息を言います。

そして、「将来利息」というのは、和解後から支払い済みまでの利息を指します。

経過利息と将来利息の2つの利息をカットしてもらうように要求することが、任意整理にてすることができます。つまり、利息の返済をすることなく元本のみを分割返済をしてもらうようにしてもらう交渉です。

以前は、利息カットに応じてくれる消費者金融業者がありましたが、過払い金返還請求ブームのせいで大手消費者金融業者でも倒産してしまうほど、消費者金融業者には資金面の体力がなくなっています。そのため、利息のカットには絶対に応じない業者が増えているのが現状です。

たとえば、すでに倒産しているSFコーポレーションでは、任意整理において「将来利息カット」「分割払い」の両方に応じない消費者金融業者も存在していました。

そのため、任意整理をすれば利息がカットされて、返済期間のリスケジュールを認めてもらえるというわけではありません。期待をしてはいけませんので注意が必要です。

安易に任意整理に応じない貸金業者が債務整理の対象となる債権者に含まれているのであれば、訴訟提起もしくは強制執行などがされる可能性も考慮して任意整理をするべきか考える必要があります。

任意整理の場合、個人再生や自己破産とは異なり、和解書を取り交わし和解書どおりに返済をしなければ、給料の差押をしてきます。

また、利息制限法と出資法の二重基準があった時代(グレーゾーン金利)に消費者金融業者と取引がある場合、利息制限法による引き直し計算をおこない、過去に払い過ぎてしまった利息を、すでに返済したものとして元本に充当して借金額を減額することをします。

任意整理を選択するかどうかのポイント

債務整理は、任意整理のほかに個人再生と自己破産があります。この中で、任意整理が一番敷居は低く、次に個人再生、最後に自己破産となります。

自己破産は債務整理の中で奥の手ともいえるものであり、利用をした場合、借金が帳消しになります。自己破産を利用した場合、財産を処分しなければなりませんが、非免責債権以外は全額帳消しになります。

個人再生は任意整理と自己破産の中間にある債務整理の方法です。個人再生は、任意整理ではとても借金の返済はできないけれど、自己破産をして財産を処分したくないという債務者が選択する債務整理になります。

では、債務整理の中で任意整理を選ぶ基準とはどこにあるのでしょうか。

任意整理の前提は、必ず完済することができるかという点です。任意整理は、借金などの債務総額を基準として、それを分割払いになっても、毎月返済をすることができるか、まず考えなければなりません。
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つまり、36回の分割払いになっても返済をすることが困難、支払うことができても生活が困窮するのであれば、個人再生か自己破産を選択しなければなりません。

任意整理の返済原資予測について

任意整理をすることができるのかできないのか、判断をする基準ですが、完済することができるか、完済できないのかということです。

任意整理できるのかどうか、任意整理をした結果をある程度予想して、分割払いの金額を毎月支払っていくだけの返済原資を用意することができるのかを綿密にシミュレーションしなければなりません。

敷居が低くてもっとも楽な方法だから、任意整理を選んでしまいますと、返済が困難になり債権者から給料の差押えなどの強制執行をされ、別の債務整理の方法を実行しなければならないことになります。

返済総額の予想について

返済原資が足りるということをシミュレートするためには、任意整理後の債務総額はいくらになるかということの見通しを立てる必要があります。

債務総額とは、債権者から請求されているそのままの金額ではなく、利息制限法による引き直し計算をした結果算出された金額が、債務総額になります。

引き直し計算をした上での金額は、引き直し計算をしてみない限り正確な金額はわかりません。

そのため、

  • 借入を始めた時期
  • 借入れの期間
  • 途中完済の経験があるのかないのか
  • 借入限度額など

これらから、ある程度幅はありますが、見込み額くらいは相談時に検討をつけることができます。

毎月の返済金額の予測

債務全部の予測金額を分割払いした場合、毎月、どのくらいの返済金額となるのか計算をします。

任意整理により、分割払いをする場合、分割回数は3年間の36回となるのが一般的です。そのため、返済総額の予想から算出された金額を36で割ることで、毎月の返済予定金額を算出することができます。

任意整理が可能なのか、そして毎月の返済予定金額で支払っていくだけの返済原資を毎月用意することができるかということです。そして、本当にこの金額を毎月3年間支払っていくことができるのかという点が重要になります。

仮に、問題なく支払えるのであれば任意整理を選択しても問題とはなりませんが、返済するのが困難、返済をすることができても生活が厳しくなるのであれば、返済する金額が少なくなる個人再生の選択、借金そのものを帳消しにすることのできる自己破産を選択することになります。

支払い能力の検討について

支払い能力の検討のためには、月々の家計を作成してみるといいでしょう。月々返済する金額を考えていくわけです。

毎月の借金返済にあてることができる余剰金の金額を検討し、家計をかなり正確に作成する必要があります。

支出については、

  • 家賃
  • 食費
  • 光熱費
  • 通信費
  • 保険料
  • 年金
  • 税金

特に税金について、滞納をすると国税局は容赦なく差し押さえをしてくることがありますので、注意をしましょう。税金の支払いについては最優先となります。

また、子供がいるのであれば、教育費や学費などが必要となり、車を所持していれば駐車場代なども発生する可能性があります。個人の生活状況により支出は大きく異なります。

自分の生活状況というものを熟考して、かなり正確に余剰金を検討する必要があります。この余剰金を甘く見積もってしまいますと、任意整理を始めたとしても最終的に返済することができなくなる可能性が高くなります。

また、ネット上では任意整理は何度でも和解をすることができ、返済が困難になったら再度任意整理をすれば任意整理は問題なしとされていますが、和解が成立したのちに返済することが困難になり、支払いができなくなってしまうと、債権者との再度の和解交渉は難しくなります。そのため、個人再生や自己破産を考えなければならなくなる可能性があります。

さらに、月々の余剰金の検討の他に、任意整理は原則として3年間で続けて返済をしていくことを大前提として和解をします。そのため、3年間、その金額を本当に返済していけるのかどうかを考えるという点も重要です。

現在のところ5万円以上返済にあてることができるが、来年、再来年も変わりなく毎月5万円以上を返済することができるのか検討をしなければなりません。たとえば、子供が進学をして学費が必要となる可能性がある場合などは、その点を考慮して計画を立てていく必要があります。

また、3年以内に定年となってしまい、毎月の収入がなくなるということも考えられます。3年以内に何か収入や支出に大きな変化があるかどうかも事前に考えておく必要があります。

毎月の返済がギリギリの場合

家計の状況から、毎月の返済が可能ではあるが、その結果、生活が困窮する場合、和解が成立したとしても、結局支払いができなくなる可能性が高くなります。このような場合、無理に任意整理をするのではなく、個人再生や自己破産を視野に検討をしていくのが重要です。

債権者の対応の予測について

任意整理を検討するときには、第一に返済能力があるのかが重要になります。

そもそも、返済能力に問題ないということであっても、債権者との間で話し合いがつかなければ、任意整理をすることはできません。

つまり、任意整理できるかどうかの判断基準は返済能力の他に債権者がどのような対応をしてくるのかということを予想しておかなければなりません。

債権者のうち、和解が困難な貸金業者が含まれている場合、分割返済が可能であっても任意整理をすることができなくなります。そのため、他の債務整理を考える必要があります。

concierge
和解に応じない債権者はあまりいなませんが。しかし、和解が困難、もしくは条件次第になります。

一括で返済することが可能な場合、頭金を多く入れることが可能であったとき、分割の回数を減らして月々の支払い額を増額することにより、和解することができるようになります。

まとめ

任意整理は債務整理の中ではもっとも有名な債務整理の手段です。

任意整理とは、日弁連「債務整理事件処理の規律を定める規定」第2条第3号のことをいい、「債権者が債務者に対して有するとみられる債権について、弁済の額、方法などについて裁判外で債権者と交渉をして処理する」ことです。

裁判所を間に介さずに、当事者間で話し合いをすることで、

  • 利息のカット
  • リスケジュール

この2つを認めてもらうものがあります。

また、過払い金が存在している場合は、過払い金をすでに返済したものとして、元本の減額にあてることができます。

任意整理をする場合、完済できるかできないかが重要になります。

月々の返済能力がない場合、任意整理ではなく別の債務整理方法を選択することをおすすめします。また、任意整理は債権者との任意の交渉になりますので、債権者が任意整理を拒否した場合、任意整理をすることはできません。

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