【解説】任意整理と住宅ローン!任意整理後に住宅ローンを利用するためにはどうすればいい?

任意整理を選択する基準のひとつに、住宅ローンの有無があります。住宅ローンを返済していて、返済が厳しくなったのであれば任意整理は自宅を手放すことなく実行できる債務整理のひとつの手段です。

また、現在はまだ住宅ローンを組んでいないけれど、任意整理をしたら一生住宅ローンを組むことができなくなるのでしょうか。

今回は任意整理と住宅ローンの関係性について紹介をします。

任意整理とその他の債務整理

債務整理は、任意整理を含めて4つの種類があります。

つまり、

  • 任意整理
  • 特定調停
  • 民事再生(個人再生)
  • 自己破産
この4つの種類があります。この中で任意整理はもっとも利用しやすい債務整理であり、債務整理=任意整理といわれるほど一般的な方法です。

特定調停については現在あまり利用されていない債務整理です。簡易裁判所に申し立てることで実行することのできる債務整理です。任意整理は同時に過払い金返還請求をすることができますが、特定調停の場合は過払い金返還請求を同時におこなうことができないことをはじめとしたデメリットが多い債務性利の方法になります。

民事再生(個人再生)は、裁判所に申し立てることで実行することのできる債務整理の方法です。手続きが複雑であり、個人的に申し立てることが難しいので、弁護士に依頼をして実行をすることが現実的な債務整理になります。任意整理よりも債務の整理効果が高く、住宅ローンを守りながら、その他の借金を圧縮することができる住宅ローン特別条項などがあります。

そして、自己破産は裁判所に申し立てることにより実行することのできる債務整理の方法です。

自身の財産を処分する代わりに、非免責債権以外の借金を帳消しにすることができます。債務整理の中では、もっとも効果が強く奥の手です。処分する財産については、20万円基準というものが一般的に運用されており、20万円以上の財産がある場合は必ず処分しなければなりません。自由財産の拡張をすることで、20万円以上の財産でも手元に残せる可能性はありますが、住宅は確実に換価処分の対象になるでしょう。

また、破産手続きの途中は破産者になり、生活や職業にさまざまな制限をかけられてしまいます。破産手続きが完了して免責許可を得ることで、破産者の状態から復権を果たし、すべての制限が解除されるのです。手続きによっては、20万円~50万円の予納金を裁判所へ納める必要があります。予納金を納めることができなければ、自己破産をすることはできません。

債務整理共通のデメリット

債務整理共通のデメリットとしては、下記のようなものがあります。

  • 手間がかかる
  • お金がかかる
  • 時間がかかる
  • ブラックリストに載る

共通のデメリットとしてこのようなものがあります。

手間がかかる

専門家に依頼をすることなく、すべて自分ひとりでおこなおうとすると債務整理は非常に手間がかかります。逆に専門家に依頼をしてしまえば、自身でおこなうことは激減するでしょう。たとえば、任意整理についてですが、弁護士に依頼をしてしまえば、後はこちらですることはほとんどなくなります。

お金がかかる

裁判所を利用する場合、予納金をはじめとした費用がかかります。また、弁護士などの専門家へ債務整理を依頼しなければなりませんので、弁護士費用も馬鹿になりません。

司法書士でも債務整理をさせえることが可能ではありますが、たとえば民事再生(個人再生)の場合は、個人再生委員という弁護士が選任される可能性が高くなります。そのため、裁判所へ納める費用はより高額になってしまうのです。

また、司法書士では制限が多いので弁護士に依頼をしてしまった方が費用を抑えることができる可能性があります。

時間がかかる

自己破産の場合、同時廃止事件という手続きであっても自己破産が終了するまでに2か月~6か月程度の時間がかかります。民事再生(個人再生)や自己破産の手続きのひとつである管財事件の場合は手続きが終了するまでに1年程度の時間がかかります。

任意整理の2か月~半年程度の時間がかかります。

任意整理や民事再生(個人再生)の場合、借金を完済するまでの期間を考えれば3年程度の時間がかかります。

ブラックリストに載る

債務整理をおこなってしまうと、ブラックリストに載ることになります。

ブラックリストに載ってしまうと、クレジットカードや新規でローンを組んだりすることができなくなります。

当然ですが、ブラックリスト載っている状態では住宅ローンを組むことはできません。

任意整理の効果と住宅ローン

任意整理の効果

任意整理の効果ですが、

  • 将来利息のカット
  • 返済期間のリスケジュール
  • 遅延損害金の免除

これらがあります。

将来利息のカット

将来発生する利息のカットをすることができます。一般的に任意整理は現在の借金を3年間36回払いで返済をする交渉を債権者と結びます。

3年間36回払いの場合、利息が発生するのであれば、総返済額が高額になってしまいますが、発生する利息をカットすることができれば、総返済額は高額にならずに済み、毎月の返済金額を減額させることができます。

返済期間のリスケジュール

一般的に任意整理の効果は3年間36回の延長があります。最長で5年間60回払いまで認められる可能性がありますが、一般的には3年間の延長しか認められません。3年間で完済することができないのであれば、任意整理をすることはできません。

concierge
これを判断するのは、弁護士です。生活を切り詰めて何とか毎月支払えるという状態であるのならば、任意整理をすることはおすすめできません。毎月ぎりぎりの状態で返済するというのであれば、民事再生(個人再生)や自己破産を検討した方がいいでしょう。

住宅を守るのであれば、民事再生(個人再生)があります。

遅延損害金の免除

遅延損害金が発生している場合、その免除を任意整理ではすることができます。

特定の債権者と任意整理の交渉ができる

任意整理は、他の債務整理の方法とは異なり、裁判所を介さない私的な和解交渉となります。そのため、任意で債務整理をする債権者を決めることができます。

そのため、住宅ローンを融資している債権者を債務整理の対象からはずして、債務整理をすることができます。結果、持ち家を手放さずに借金だけを減額することができます。

借金が住宅ローンしかないとき

では、借金が住宅ローンしかないときには、任意整理を利用することができないのでしょうか?

住宅ローンを滞納していないのであれば、住宅ローンの債権者と交渉をすることでリスケジュールを認めてもらうことができます。住宅ローンを滞納してしまうと、債権者は交渉に応じてもらえない可能性がありますので注意をしましょう。

よくある誤解として、住宅ローンの繰り上げ返済は可能だけど、返済期間の延長を申し出たら、住宅を没収されて換価処分されてしまうと考えてしまいがちです。しかしながら、中小企業金融円滑法(モラトリアム法)が制定された影響で住宅ローンの延長交渉にのってくれやすくなっています。

そして、一般的に35年を超えない範囲ならば、住宅ローンの債権者は返済期間の延長を認めてくれる可能です。

たとえば、25年ローンを組んでいた場合、5年~10年の住宅ローンの延長を認めてくれる可能性があります。30年でローンを組んでしたまった場合は5年の延長の可能性があります。

ただし、年齢制限に注意をしてください。35年を超えない範囲であればリスケジュールが可能なのですが完済時の年齢も考慮されます。完済年齢が75歳までと定められている銀行の場合、75歳を超えて住宅ローンの延長をすることは不可能です。

たとえば、現在の年齢が55歳で20年の住宅ローンを組んでいるとします。残りのローンが15年ある場合、リスケジュールをすることのできる期間は最長で5年となります。

話がそれますが、住宅金融支援機構は最長15年の延長が可能です。住宅金融支援機構の提供する住宅ローン商品であるフラット35は、契約年数にかかわらず15年の延長が可能です。

住宅ローンを長期で滞納をしている場合

住宅ローンを長期で滞納している場合、期限の利益を喪失してしまいます。期限の利益を喪失してしまうと、分割返済をすることができなくなるのです。つまり、一括返済をしなければならなくなるわけです。通常、一括返済をすることは不可能なので、ローン保証会社が代位弁済をします。

代位弁済をされてしまったら、任意売却、もしくは競売になります。任意売却は任意整理のひとつの手段です。
任意売却とは抵当権という権利を持っている債権者と交渉をして抵当権を外してもらい、市場価格に近い価格で住宅を売却するというものです。住宅を売却して売却益で住宅ローンを返済することで住宅ローンの残債務を圧縮します。そして、圧縮した住宅ローンの残債務を返済していきます。

住宅ローンを長期で滞納している場合、任意整理の交渉に債権者は応じにくくなりますので、民事再生(個人再生)を利用する方がいいでしょう。民事再生(個人再生)を利用すれば、住宅ローンのリスケジュールに応じてもらえ、喪失した期限の利益も回復することができます。

任意整理をすると住宅ローンが利用できなくなる?

任意整理をして借金を返済した経験がある場合、しばらくの間は住宅ローンを利用することはできません。

任意整理をすることにより住宅ローンを利用することができなくなる理由としては、信用情報機関の個人信用情報に金融事故情報が登録されるので、住宅ローン審査には通らなくなります。

個人信用情報というのは、個人の借入は返済などについての履歴などの情報になります。そして、信用情報機関が個人信用情報を収集し保管しています。

指定信用情報機関としては、

  • CIC(株式会社シー・アイ・シー)
  • JICC(株式会社日本信用情報機構)
  • KSC(全国銀行個人信用情報センター)

この3つがあります。

住宅ローンを融資してくれる銀行や信用金庫の場合、KSCに加盟をしており、住宅ローンの審査の際に加盟にKSCにて個人信用情報の確認をおこないます。そして、特に問題がなく信用できる人であれば審査に通して住宅ローンの融資をおこないます。借入返済履歴に問題がある人は審査には通しません。

前述しましたが、任意整理を利用してしまうと、個人信用情報に金融事故をおこしたという事故記録が残ります。その結果、住宅ローン審査の際に事故情報がある場合、過去に任意整理や債務整理をしたことが銀行や信用金庫にばれてしまうので、審査に落ちてしまうわけです。

任意整理をすると、これが原因で住宅ローンを利用することができなくなります。個人信用情報に事故記録が載っている状態を、一般的に「ブラックリストに載る」といいます。

ちなみに、債務整理や金融事故を起こした人の名前が載っているブラックリストというリストは存在しません。
このブラックリスト状態になると、住宅ローン審査に通らなくなり、収入があり上場企業に3年以上勤めて信用力があったとしても住宅ローンの審査に通らなくなりますので、住宅ローンを利用することができなくなります。

一生住宅ローンを利用することができなくなるのか?

任意整理をした場合、一生住宅ローンを利用することができなくなるわけではありません。任意整理をしたせいで一生ブラックリストに載りつづけてしまうと、誰も任意整理をしなくなってしまいます。

基本的に、信用情報機関は手続き後一定期間が経過したら、任意整理による事故情報は消去されます。任意整理による事故情報が消去されるまでの期間は、原則として任意整理の手続き後5年間です。任意整理をした後5年経過すれば、住宅ローンの利用が可能となります。

そして注意をしなければならないのが、任意整理のブラックリストの起点は完済してから5年になります。そのため、リスケジュールの期間(一般的に3年間)も合わせて8年間はブラックリストに載ることになります。

信用情報を開示してみればブラックリスト登録の有無が分かる

信用情報機関では、本人開示制度というものがあります。個人信用情報に事故情報が登録されているのかを確認することが可能です。

住宅ローンの審査に落ちてしまったという履歴も登録されますので、その後ほかの金融機関で審査を通すのが難しくなることがあります。そのため、住宅ローンの申し込み前に、個人信用情報を開示しておくといいでしょう。

  • CIC:窓口・郵送・インターネット
  • JICC:窓口・電話・郵送
  • KSC:郵送のみ
住宅ローンの審査で重要になるのは、KSCなので事前にKSCから個人信用情報を取りよせておきましょう。

任意整理後の住宅ローンを通りやすくするためには?

任意整理以外の事故情報を残さない

信用情報の回復を待つ間に、新たな金融事故情報を増やさないことが重要です。住宅ローンの審査で、支払い態度を疑われないように、公共料金や家賃などの滞納をしないように気をつけましょう。とくに、携帯電話の料金の滞納については以外と多くやってしまうミスなので注意をするべきです。

自己資金を貯めておく

年収が低いと住宅ローンの審査に通らないと思われがちですが、審査で重視されるのは「返済負担率」です。

返済負担率とは、年収の中で住宅ローン返済額が占める割合になります。自己資金を貯めておき、購入したい物権の価格や建築費用を抑えることができれば、ローンで借りる額も低くなります。

そうすることで、返済負担率の条件がクリアでくる可能性が高くなります。

自宅を購入するには頭金、諸費用、引っ越し代などが必要です。そのため、物件価格や建築費用の25%~35%を自己資金で用意しておくことが理想的です。

ローン審査に落ちた履歴は残さない

個人信用情報の金融事故情報が消えて、いざローン審査をする場合、一度にたくさん申し込むというのはあまりいい手段ではありません。信用情報機関には、ローン審査の際に金融機関が情報を照会したという履歴が残ります。

この履歴が多い人は申込みブラックといって、たくさんの銀行に住宅ローンを断られているから、危険人物であると警戒されてしまいます。そのため、審査に通りやすいローンを狙い申込みをすることがいいでしょう。

この申込みブラック状態は半年、つまり6か月経過で消去されます。

まとめ

住宅ローンがある場合、任意整理をすると住宅ローンを融資している債権者を債務整理の交渉から外すことができます。

民事再生(個人再生)という手段もありますが、民事再生(個人再生)を利用しなくても、任意整理で債務が整理できるのであれば任意整理をした方がいいでしょう。

任意整理をした場合、5年間はブラックリストに名前が載りますので、その間は住宅ローンを組むことができません。そして、確実に住宅ローンの融資をしてもらう場合、物件価格や建築費用の25%~35%の自己資金を用意しておくといいでしょう。

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