借金を債務整理することなく、滞納を続けていますと、取り立ては厳しくなります。取り立てがあってもさらに放置をしていると、債権者が給料を差押えてしまいます。
給料を差押えられてしまいましたら、収入が減る以外にも困ることが出てくるでしょう。例えば、借金をしていることが職場にばれてしまうなどです。
また、給与差押えを回避するためには、任意整理は役に立つのでしょうか。
目次
借金を滞納すると勤務先に電話がかかって来るのか?
消費者金融からの借金の返済をしなければ、勤務先に消費者金融から連絡がいくのではなかろうかと心配する方がいるでしょう。
まず、消費者金融は借金の返済のために債務者の自宅や携帯電話に何度も電話をします。場合によっては、郵便や訪問という方法で債権者と連絡を付けようとするでしょう。
消費者金融は何度連絡をしても、債務者が電話に出なかったり、着信拒否をしたり、居留守を決め込んだりしますと、消費者金融は連帯保証人や勤務先にやむを得ず連絡します。この場合、消費者金融が自身で積極的に消費者金融であり、借金の滞納の件で連絡をしましたと告げることは多くありません。
これは、債務者のプライバシーを尊重してのことでしょう。
ただし、電話を受けた人が事情を察してしまうことがあります。消費者金融からの借金に限らず、家賃や各種ローンを滞納し、連絡を無視し続けられた消費者金融側として、最終的に勤務先へ連絡をする手段に出るのです。
給料の差押えとは
消費者金融からの電話に対応しても、借金の返済をしなければ、給料を差押えられることがあります。この、給料の差押えとはどのようなことでしょうか。
督促から差押えまでの流れ
借金を返済しない場合、返済するように督促が来て、最終的に差押えをされてしまいます。督促から差押えまでの過程を紹介します。
1.債務者が滞納を始める
滞納後1~2ヶ月程度、滞納をすると、消費者金融側から連絡が来るようになります。
- 郵便
- 電話
などです。
2.内容証明で支払督促がくる
度重なる督促を無視していると消費者金融は内容証明を送ってきます。内容証明は差押えとは関係ありませんが、返済をしなければ差押えの準備をします、というメッセージになります。
3.仮執行宣言付き支払督促が届く
内容証明を無視して滞納を続けている場合、今度は、「仮執行宣言付き支払督促」という書類が送られてきます。この書類は今までの内容証明郵便とは異なり、裁判所から特別送達という方法で郵送されます。
確実に郵便職員から手渡しで受け取ることになります。受取には署名が必要であり、郵便ポストへ投函されることはありません。そのため、原則として気づかなかったではすみません。
この支払督促には、通常、督促異議申立書が同封されています。
裁判所が債権者からの申立てを受けて、債務者へ債務の返済を命令するのです。債権者が本格的な法的措置をとった証拠です。
また、債権者によっては「貸金返還訴訟」の手続きに入ることもあります。この訴訟によって、債権者は債務名義を獲得します。
この債務名義を得ることにより、債権者は給与を差押えたり、強制執行をおこなったりすることができるようになります。
公正証書であらかじめ契約している場合、抵当権があるのであれば、債権者は訴訟を経ずに差押えや競売の手続きに入ることが可能です。
そして、裁判所から支払督促が届いたら要注意です。
前述したように、消費者金融からの借金をはじめとしてクレジットカードなどを滞納して、返済せずにずっと放置をしていますと、債権者は法的な手段に訴えてきます。
- 支払督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
この3つがあります。すべて裁判所を介して申立てをおこないます。最終目標としては、すべて同じです。それは、強制執行による債権の回収になります。
支払督促が選ばれる理由
法的な手段は、訴訟を一般的にイメージすると思いますが、実務上は支払督促が選択されることが多くなります。消費者金融が支払督促を選ぶのには複数の理由があります。
まずは、手続きが非常に簡単でスピーディーなことを上げることができます。
一方、支払督促は、債権者からの申立ての書類の確認のみで債務者に支払命令をすることができるのです。
つまり、仮執行宣言付き支払督促を送る理由は、債権者だけの意見を聞いて支払い命令を裁判所が出してくれるという、債権者にとっては非常に都合の良い制度になります。しかも、裁判所に出頭することなく書類提出だけで完結します。
借金が身に覚えがない、金額に納得がいかない場合には、2週間以内に裁判所に異議も申し立てをすることができます。この段階で異議を申立てれば、異議が正しいのか関係なく支払い督促の効力はいった喪失します。その後、異議を申立てれば、そのまま通常訴訟へ移行します。
ですが、2週間以上、放置してしまうと、そのまま債権者の申立てにより、「仮執行宣言」が出されます。
訴訟の場合、60万円を超える借金の請求については、少額訴訟をすることができません。つまり、通常訴訟を利用しなければならないのです。しかし、支払督促はそのような金額の制限はないので、債権者に好まれます。
仮執行宣言が府されると、ただちに強制執行が可能
裁判所により仮執行宣言が付されてしまうと、債権者はただちに強制執行の申立てをすることが可能です。
仮執行宣言の発付からさらに2週間、異議申立て期間があり、その後、差押えが可能になる、という間違った情報がありますが、仮執行宣言は確定を待つことなく債権執行ができる手続きです。
後述する、仮執行宣言付き支払督促正本が債務者に送達された後は、送達証明書さえあれば、債権者はすぐに強制執行ができます。つまり、さらに2週間待つ必要はありません。
支払督促が確定するまでの期間
債務者は、仮執行宣言付きの支払督促が届いてからさらに2週間は異議申立てができ、通常訴訟に移行することができます。
これは、民事訴訟法403条1項3号に記載があります。
(執行停止の裁判)
第四百三条
次に掲げる場合には、裁判所は、申立てにより、決定で、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てて強制執行の開始若しくは続行をすべき旨を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。ただし、強制執行の開始又は続行をすべき旨の命令は、第三号から第六号までに掲げる場合に限り、することができる。
三 仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起又は仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立て(次号の控訴の提起及び督促異議の申立てを除く。)があった場合において、原判決若しくは支払督促の取消し若しくは変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと又は執行により著しい損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
1度目の最初の支払督促を受け取ったとき、異議申立てすれば、異議が正しいかどうかに関わらず、支払督促を無効にすることができます。2度目の仮執行宣言付き支払督促の異議申立ての場合、正当な理由がなければ強制執行を停止させることができません。
また、2度目の異議申立て期間、つまり2週間でも督促異議の申立てがなかった場合、支払い督促は確定します。
4.差押命令正本が届く
債権者が給料の差押えを裁判所に申立てし、申立てが受理されると、裁判所は債務者の勤務先へ「差押命令正本(債権差押命令)」という書類が送達されます。
消費者金融はようやく差押えが実行され、債務者の勤務先は債務者への給料を債権者に払うか、または法務局へ供託するなどの義務が発生するのです。
勤務先が直接、債権者に支払う方法
差押えた給与部分については、直接、債権者と連絡をとって債権者の指定する口座へ振込みます。振込を債権者が確認をしたら、債権者は裁判所に毎月「取立届」を提出します。
勤務先が供託所に預ける方法
差押えた給与部分については、法務局に供託します。そののち、裁判所が債権者に連絡をとり、配当手続き、もしくは弁済交付手続きをします。債権者は裁判所から明細書を受け取って、それと引き換えに供託所で払い渡されます。
この段階になりますと、どんなに借金を隠したいと考えても、勤務に先借金の存在がばれてしまいます。
給与手取額の全額が供託されると面倒
第三債務者、ここでは「職場」が法務局に供託する場合、差し押さえられた金額だけを供託する方法が第1、手取額の全額を供託する場合が第2という、2種類のパターンがあります。
強制執行で給与債権が狙われる理由?
債務者金融などの貸金業者の場合、金銭消費貸借契約を結ぶ際、勤務先についての情報を記載するケースが多くなります。
給与債権は債権者にとって、差押がしやすく、最も手堅く取り立てができる債務執行の1つになります。借金の強制執行で給料が差押えられることは珍しくありません。
- 不動産執行
- 動産執行
- 債権執行
などがあります。
多重債務者の多くは、そもそも強制執行で差押えできる財産をあまり持っていないことが多くなります。そのため動産差押えしても意味がないケースが多くなります。そして、不動産の場合は、換価手続き(お金に換えて配当する手続き)が、非常に時間がかかり面倒です。その点、給料は将来にわたり確実に現金が入って来る債権です。つまり、差押えで非常に便利なのです。
一方、債務者の立場からした場合、生活がかかっていますので、給料が差押えられるというのは非常に問題のあることです。給与債権を差押えられた場合、任意整理をすることで、この問題が解決できるのかについては後述します。
任意整理では差押えを停止させることができない
借金の滞納が長期間にわたって続くと、貸金業者は支払督促により給与差押えなどの強制執行に踏み切ります。
給与を差押えられてしまうと、経済的な再建もままならなくなります。そのため、債務整理をする場合、差押えや強制執行を何とか停止したいと考える方も多いでしょう。
個人再生や自己破産では、強制執行は停止できる
個人再生や自己破産、特定調停といった手続きは、強制執行を停止することが可能です。個人再生や自己破産、そして特定調停はすべての裁判所が管轄する手続きになります。そのため、裁判官が手続きにあたり、必要と判断されれば、強制執行手続きを裁判官の判断で停止することができます。
給料の差押えを確実に停止することを考えるのならば、任意整理以外がおすすめ
給料の差押えをされてしまうと生活が厳しいという場合、強制執行手続きにより毎日の資金繰りに苦労している場合、どうしても強制執行手続きを停止したい場合、任意整理以外の方法での債務整理が重要です。
まとめ
借金をずっと滞納していると、債権者は強制執行という手段をつかい、給料の差押えをします。給料の差押えをされた場合、会社に借金があることがばれてしまいます。
しかし、この強制執行は民事再生(個人再生)・自己破産・強制執行をおこなうことで、停止させることができます。
しかし、裁判所を介さない、私的な和解交渉である任意整理は強制執行を停止することができません。
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