自動車ローンを完済していれば、債務整理をしても車を手元に残すことは可能です。
というわけで、今回は債務整理をしたら車はどのようになってしまうのかを紹介します。また、債務整理後に車を購入するためにはどのような方法があるのかもあわせて解説をしていきます。
車が生活必需品であるのならば紹介する方法を実践してみることをおすすめします。
目次
債務整理をすると車はどうなる?
都会に住んでいれば車が無くても様々な手段で移動することが可能ですが、地方圏の場合車がなければ日常生活を送ることも困難になることが予想されます。
そのため、車を失う可能性がある債務整理には、手を出しにくいというのが現状ではないのでしょうか。
- 任意整理
- 特定調停
- 民事再生(個人再生)
- 自己破産
などの4つの種類があります。
この4種類の中で、特定調停については、そこまで利用されているものではなく、債務者にとって不利になるケースが多いので詳しく触れません。特定調停は簡単にいえば、任意整理を簡易裁判所で弁護士などの力を借りずにおこなうものと考えてもらえば結構です。デメリットが多いので正直おすすめはできません。
任意整理の場合、車はどうなるのか?
任意整理は、自動車ローンを完済していなくても車を残すことができる可能性が高くなります。
任意整理は、たとえば、A、B、Cという3社からお金を借りている場合、A社とB社と交渉をして、将来的に発生する利息をカットしたり、返済期間を延ばしたりすることが可能な債務整理の1つです。
自動車ローンを融資している債権者が、任意整理のリストから外れていれば、任意整理をしたとしても自動車ローンを融資している債権者には、まったく影響がありません。
ただ、任意整理の場合、任意整理をしても「将来利息のカット」と「返済機関の延長」のみしか効果はありませんので、自動車ローンを含め他の借金も必ず返済をしなければならないので、他の債務整理の方法よりも返済金額じたいは多くなり、生活は少し厳しくなることが予想されます。
民事再生(個人再生)の場合、車はどうなる?
民事再生(個人再生)は、任意整理と異なり、特定の債権者と交渉をするということはできません。すべての債権者を対象にして、借金の圧縮をするのが民事再生(個人再生)です。
ただし、住宅ローン特別条項というものを利用することで、住宅ローンを守り、その他の借金を圧縮することができるという特徴があります。
住宅ローンを守るとは、住宅ローンを債務整理の対象から外すということです。住宅ローンごと民事再生(個人再生)をして借金を圧縮してしまうと、抵当権という権利を債権者が行使して住宅を没収してしまうのです。
住宅ローン特別条項を使えば、住宅ローンを民事再生(個人再生)の対象から外すことができるので、いままでどおり住宅に住み続けることができ、なおかつ、その他の借金を圧縮することができます。
つまり、例外がありますが、自動車ローンの完済前に民事再生(個人再生)を利用すると車は没収されてしまいます。
自動車ローンを完済前でも車が没収されないケース
自動車ローンの完済前であっても車が没収されないケースが存在します。
一方、信販会社の名前が所有権の欄に記載されている場合、民事再生(個人再生)をすると、問答無用で車は没収され競売にかけられ売却されます。これは、所有権留保事項といって返済が滞ったときに、自動車ローンを融資している債権者が車を引き上げて売却していいという契約事項があるからです。
車を購入する際に、銀行から自動車ローンの融資をしてもらい購入した場合、車の所有者ははじめから債務者のものとなっています。これは、車を担保にして自動車ローンを融資するのではなく保証会社による担保があるので、銀行は車の所有権を持ちません。
しかし、ディーラーローンを利用して車を購入した場合、ディーラーと提携をしている信販会社が車を担保にして自動車ローンを融資しますので、自動車ローン完済まで車の所有権は信販会社のものになります。
自己破産の場合、車はどうなる?
民事再生(個人再生)の場合、自動車ローンを完済し所有権を債権者が持っていれば、車は没収され処分されません。
しかし、自己破産の場合は債務者が持っている車は財産と見なされてしまいますので、自動車ローンを完済して所有権を持っていても処分の対象になる可能性があります。
そもそも、自己破産は一定額以上の財産をすべて処分しなければならない代わりに、納付の義務がある税金や慰謝料、損害賠償料以外の借金や債権はすべて免除になります。
- 20万円以上の価値がある車
- 20万円以上の貯金・保険
- 持ち家などの不動産
- 99万円以上の現金
などが処分の対象です。
処分換金された財産は、すべての債権者に公平に配分され、残債務の埋め合わせに使用してもらいます。
ということで、車も財産として判断されますから処分の対象です。しかし、ここにも例外があります。
自己破産で没収されない車について
また、車がなければ生活できない場合、たとえば体に障害のある方が家族にいるといった場合は、自由財産の拡張として車を処分の対象外にすることがあります。これは裁判所の判断により異なります。
- 7年以上前に新規登録された車
- 新車時の車両本体価格が300万円未満
- 現在、20万円未満の価値しかない
もし、自己破産をして破産管財人が選任され、債務者(破産者)の車という財産が破産財団に組み込まれた場合、車の売却価格を破産管財人へ支払えば破産管財団から車を買いとるという形で車を手元に残すことが可能です。
車の価値が20万円を超えそうな場合の注意点
自己破産をする際に、あからさまに車が破産管財団に組み込まれることがわかっている場合の対処方法として、ベターなのが現在の車を20万円以下の資産価値の車に買い替えるという方法です。
また、絶対にやってはいけないのが名義変更です。自己破産をしても家族名義の財産は処分されません。あくまでも、自己破産を裁判所に申立てた者の財産のみが処分換金の対象となります。
もう1点、自己破産をする者があからさまに自動車ローンを支払っている、配偶者名義の車についても、自己破産をする者の財産と見なされますので、処分換金の対象になります。
これは注意をしておきましょう。
債務整理後に車を購入するためには?
債務整理をしたからといって車を購入できないとは限りません。債務整理をすると、信用情報機関という機関に個人信用情報として、債務整理や金融事故を起こした記録が残ります。
日本にはCIC、JICC、KSCと呼ばれる信用情報機関があるのですが、たとえばKSCならば銀行が加盟をしている信用情報機関になります。
債務整理後、銀行に自動車ローンを融資してほしいと申立てたときに、銀行はKSCへ個人信用情報開示請求をおこない、債務整理をした記録や金融事故を起こした記録が無いかを調べます。
ここで債務整理や金融事故を起こしたという記録があると、貸し倒れをする可能性が高くなり、損害が出てしまうので審査の段階でお断りをします。
では、一生、債務整理をした記録が残り続けるのかといえば、そのようなことはなく5年~10年で記録は抹消されます。
- 任意整理:5年
- 特定調停:5年
- 民事再生(個人再生):10年
- 自己破産:10年
この期間はブラックリスト期間となります。
注意点として、ブラックリスト期間は任意整理の場合、完済したときを起点として5年間となります。完済するまでに3年間かかったら通算で8年間は自動車ローンの融資に申込んでも落とされる可能性が高くなります。
しかし、少額ならともかく車の購入資金に充てる額を借りてしまうと再度、債務整理をしなければならない可能性がありますのでおすすめはしません。
自動車ローンを融資までの道のり
債務整理後に、中古車購入で利用できる自社ローン
もちろん、数年単位で計画を立てて貯金をすれば不可能ではないでしょう。新車でなく中古車であればなおのこと不可能ではありません。
しかし、債務整理をしてすぐに車が必要になった場合、中古車販売店が提供する自社ローンというものを利用してみることをお勧めします。
これであれば、債務整理後のブラックリスト期間であっても、信販会社の審査を必要とすることなく利用することができるので、一括現金払いをすることができなくても中古車の購入が可能です。
ただし、自社ローンを扱っている中古車販売店の数というのは多くありません。中古車というのは仕入れに多額の費用がかかりますので、自社ローンを売りにして販売をしてしまうと、自社ローンの返済が完了する前に車を仕入れる資金がなくなってしまい、在庫切れになる可能性が高くなります。
そのため、資金に余裕があり、銀行から信頼をされている販売店でしか、この自社ローンを取り扱うのは難しいのが現状です。
自社ローンの注意点
高額な車では利用できない
自社ローンにより、立替費用が大きくなると、販売店側としては非常にリスクを伴います。そのため、高額な中古車を購入するときにこの自社ローンを使用することはできません。
車両価格が上乗せされる
自社ローン完済まで売買ができない
当然ですが、返済が滞ってしまうと、すぐに車を没収されてしまいます。その際、車体に傷がついていたり、故障していたりする部分があれば、購入者負担で購入時と同じ状態に修理しなければなりません。
保証人が必要
自社ローンの場合、必ず保証人をたてる必要があります。保証人は基本的に親や兄弟などの親族でなければ保証人としては認められません。友人や知人では保証人とはならないので注意しましょう。
支払い回数が短い
一般的に自動車ローンは長めに設定することができます。しかし、自社ローンの場合、自動車ローンと比較をすると支払回数が短く短期間のうちに完済をしなければならないのです。これは、前述したとおり中古車会社の車の仕入れ資金と関係があるのですが、相場としては12回~24回払いが上限となっています。
まとめ
- 任意整理・特定調停:手元に残せる
- 民事再生(個人再生):自動車ローンを完済していれば手元に残せる
- 自己破産:20万円以下の価値なら手元に残せる
このように、債務整理をしても車を手元に残すことは可能です。
- 任意整理・特定調停:5年
- 民事再生(個人再生):10年
- 自己破産:10年
この期間はブラックリスト状態になりますので、ローンを組むことができません。
中古車でもいいので車がすぐに必要という場合には、自社ローンというローンを提供している中古車販売店を利用することで、ローンで車を購入することができます。